点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

とある外資系コンサルティングファームで働いているアラサーのつぶやきです

表現方法をもっと磨きたい ~ 他の方々のブログを通じて

昨日ブログを開設して2ヵ月たった感想を書いたが、少しその補足を。

lightingup.hatenablog.com

インプットする力、思考する力、アウトプットする力がそれぞれ向上したと書いたが、正直「アウトプットする力」自体はそれほど変わっていないと認識している。

より正確に言うと、インプットする力や思考する力が伸びたので、結果としてアウトプットの質は向上していると思う。しかし、自分で何かを表現するという点に関しては、正直大きな変化を感じていない。

 

特にブログ開設にともない他の人のブログを見る機会が増えるにしたがい、自身の表現力の乏しさを痛感している。

 

ということで、ここからは私が日々チェックしているブログをいくつかピックアップし「こういう文章を書きたいな」という憧れを記していこうと思う。

※他人のブログを紹介するのマナー的にどうなの、という意見もあるかと思いますが、もともとオープンになっているものですし、またポジティブなことを書くのでご理解ください。なおはてなブログの場合「言及の一覧」に載り通知が届くと思いますので、もし掲載されるのが嫌な方おられましたらコメントください。削除します。コメントも承認制なので、公開されずにお送りいただけます。

 

表現力豊かなブログ

まず フィクショーン さん。短編小説を週に3本更新している(なお他にも絵本の紹介やニュースに対する記事なども掲載されている)のだが、それが非常にユーモラス。語彙や表現力の違いではなく、発想力の違いなのだと思う。どういう思考回路をしているのか、一度頭の中を見てみたいものだ。

www.fic-tion.com

 

次に、ダディ・ブラウン さん。年齢・家族構成的に、恐らく私のちょっと人生の先輩にあたるかた。

pto6.hatenablog.com

書かれていることは日常のワンシーンであることが多いのだが、とても惹かれる文章を書かれる。言い方が悪いかもしれないが、書いていることは小説でもライフハックでも社会への問題提起でも誰かを落とす文章でもなく、シンプルに日記だ。にもかかわらず、吸い込まれるような文章を書かれている。

困ったことに、ダディ・ブラウン さんの文章の良さを適切に語る言葉を私は持ち合わせない。というよりも、なぜ凄いのか、どうしてこの文章が好きなのか、自分自身の言葉で言い表すことができない。もっともそれが、自分には到底及ばないということなのだろう。

 

次に nana さん。まずブログの名前がパンチ力が凄いね。nana-sexless2.hatenadiary.com

男女の間の機微を捉えたストーリーが情緒豊かに書かれている。

特に感心するのは、言葉に、書かれた言葉の意味以上の意味を持たせる表現力。例えば男性とデートの中での一節。 

鞄を持った時に鞄の紐にかけていた冷房対策で持ってきた薄いグレーのストールを落としているのに気がついた

綺麗な色のストール

東京で落し物をしても戻ってくることなんてない

落し物をした私が悪いのだ

こういう書きっぷりは無理です、できない。こういう感性を持ちたい。

 

表現力繋がりで、左利きの憂鬱 さん。

hidarikikin.hatenablog.com

この方は若年性パーキンソン病に罹っておられるのだが、それでも懸命にブログを書かれている。その姿勢もさることながら、文章に込められた重みが私のような薄っぺらい文章とはまったく異なる。

例えば、以下はご本人が自身がパーキンソン病だと告知された後の一節。

自殺も考えると思うが、そんな思いも頭をよぎった。その思いを振り払おうと笑顔を作ろうするが、顔がこわばって笑えなかった。

 これは勝手な想像であるが、一瞬の出来事をこのように逃さずに表現できるということは、それだけ 左利きの憂鬱 さんが「今」を一所懸命に過ごしているからなのだと感じている。

 

ロジカルさ・明瞭さの高いブログ

さて、ここまでのようなブログは、たぶん私はどれだけ頑張っても書けないのだろう。ある程度は近づけるのかもしれないが、、、たぶん下手な小説のようになって、誰も得をしないであろう。

誰でも得手不得手・向き不向きはあると思う。自分は、コンサルタントらしく、如何に考えて、それを分かりやすく表現するか、ということに注力すべきなのだろう。

 

という面で、お手本にしているブログをいくつか紹介したい。

 

まずは KenKagimura さん。恐らくどこかの戦略ファームのマネージャーかシニアマネージャーさん。

www.tokyo-harbor.com

ほぼ毎日更新を行っているにも関わらず、書かれていることの中身も、論理展開も、1つ1つの記事の切れ味がとても鋭い。私は同業の後輩にあたるわけだが、毎日欠かさずチェックして勉強させてもらっている。

 

次に同じ士業として(厳密にはコンサルは士業ではないが...) mayaaaaasama さん。
www.mayaaaaasama.com

士業の視点で、内容は業界の話から世の中の話まで多岐にわたり、毎回長い記事を書かれているのだが、どの記事もとても分かりやすい。話の論理構成がしっかしりているので、どんなに長い文章であっても違和感なく頭の中にスッと入ってくる。論理的な文章は分かりやすいという良いお手本だと考えている。

 

さてここからはもう少しフランクな記事。 システムエンジニアの ノリック さん

www.norick-matsumoto.com

ノリック さんに限らないが、システムは論理的に書かなければ動かないわけなので、そのためかエンジニアさんの文章は読みやすいケースが多い。ノリック さんもまさにそうで、一方で遊びのような書き方の要素とのバランス感覚ととても高く、真面目な内容であっても面白く読むことができる。見習わなければ・・・

 

そして最後に orangeitems さん。

www.orangeitems.com

クラウド業界で働くエンジニアさんなのらしいが、毎日2本程度記事を更新していて、仕事とブログをどうやって両立させているのかがまず気になる笑

記事の内容も、何かしらの事象に対してご自身の考え・考察を理路整然と語っているスタイルで、自分の目指す方向と近いと感じている。が、方向性が近いだけであって、選ばれるテーマの視点や考察の深さは足元にも及んでいないので、もっと精進せねばと感じる日々である(しかもほぼ毎日2本更新されているので、自分の至らなさを毎日2回思い知らされていることになる!)。

 

 

ということで、上記以外にも参考にさせてもらっているブログはいくつもあるが、その中でも特に日々「すごいな」と思っているブログをいくつか紹介してみた。

取り上げたのは、タイプのまったく異なるブログと方向性の近しいブログであるが、特に前者に関しては、日常生活を普通に送っていたら巡り合わなかった文章だと思う。このような貴重な出会いを得ることができたのも、ブログを開設したことのメリットなのかもしれない。

 

ではでは。

ブログを開設してから少し賢くなったと思う:意図的戦略と創発的戦略

このブログは令和が始まった日に開設した。

ブログを書き始めてからちょうど2ヶ月経ったわけだが、1つ大きな変化が現れている。

最近、以前と比べて賢さレベルが上がっている気がする。

 

どういうことか、コンサルらしくインプットする力、思考する力、アウトプットする力の3つのポイントに添って、過去の記事を整理しながらまとめるとともに、最後にそこから言えることを考えてみた。

 

インプットする力 

この2か月で事象から得られるインプット量が増えたと感じている。

これは、単に読書量が増えたとか、調べる量が増えたとか、それだけの話ではない。

日々の生活の中で物事を見るメッシュが細かくなったというか、ブログネタは無いかと探す意識により、日々の気づきが増えたということだ。

 

実際にいくつかの投稿した記事を振り返ってみよう。

例えば、こちら。飲食店でその店の強さの源泉を考えてみた記事。

lightingup.hatenablog.com

これまでも飲食店で売上規模や良いところを考えてみたことはあったが、この記事のように深い洞察ができたので、観察眼が良くなったからだと感じている。もしこの飲食店に行ったのがブログを書き始める前であったとしたら、同じ景色を眺めたとしても、ここまで多くのことに気が付かなかったと思う。
(なおこちらは「はてブ砲」のおかげで多くのPVを呼び込んでくれた)

 

こちらも同様に、ただニュースとして眺めるか、それともそこから気づきを得られるかの良い例だと思う。

lightingup.hatenablog.com

 

 またこれは自分自身の行動や発言を見る力が高まった例である。

「顧客視点で語るにはクライアントの言葉を借りればよい」とこれまでも考えて実行していたが、それをより細かく見ることで3種類に分解することができ、その結果をまとめることで出来上がった記事である。

lightingup.hatenablog.com

 

思考する力

ブログを運営するにあたり、この「思考する」こと、「自分で考えたことを発信する」ことを何よりも重視している。ので、たまに書いてしまうことはあるが、ただの出来事を記述するだけの日記や、事実の羅列、調べればわかるような知識だけの投稿は極力行わないようにし、何かしらの自分の考察などの「付加価値」を乗せることを心掛けている

そういう観点で過去の記事を眺めると、 例えば以下は他者のコラム(ベンチャー就職支援Slogan社の「ベンチャー転職1年目の教科書」というコラム)に書かれていたことを構造化した記事は、よく考えてかけていると感じている。
lightingup.hatenablog.com

項目が10個あったのだが、たんにこれをグループ化しまとめた、というだけではなく、自身の課題の特定・課題の解決に利用できる「フレームワーク」として再構築したことは、自分なりの付加価値だと考えている。 

 

また自分自身の考える思考の幅も広がったと感じており、例えば以下の記事では、とある客層にとって、スポーツジムと Omiai などのマッチングアプリが競合関係にあると論じているのだが、このような思考の発展はブログを書かなければなかなか行わないので、自身にとって思考よいトレーニンとなっている。 

lightingup.hatenablog.com

 

さらに考えるテーマで忘れてはならないのが、自分の暗黙知を理解することができるメリットだ。

ja.wikipedia.org

暗黙知(あんもくち、英: Tacit knowledge)とは、経験的に使っている知識だが簡単に言葉で説明できない知識のことで、経験知と身体知の中に含まれている概念。例えば微細な音の聞き分け方、覚えた顔を見分ける時に何をしているかなど。マイケル・ポランニーが命名。経験知とも。
暗黙知に対するのは、言葉で説明できる形式知暗黙知としての身体動作は説明しにくいが、経験知では認識の過程を言葉で表すことができる。

例えば以下は、なんとなく経験的に行っていたことをちゃんと整理しまとめることによって書くことができた記事なのだが、これによって自分自身の再現性も高まったし、後輩などへの指導も行いやすくなったと感じている。

lightingup.hatenablog.com

 

アウトプットする力

正直、自分自身の表現力・描写力はイマイチだということはよく知っている。情緒豊かであったり、ウイットに富んだ文章を書くことは、残念ながら向いていない。。

そういう意味でこれまでの2つの項目に比べると成長はすくないのだが、しかし感性の領域ではないところで、例えばロジカルさを突き詰めたり、構造として読みやすい文章、読み手を意識した文章を書く、などはできると思うし、実際に向上に向けてチャレンジしてきたつもりである。

例えば以下の書評は、論理展開や起承転結が明確で(概要紹介⇒本書のエッセンス紹介⇒自身の主張を交えた引用⇒活用する際の留意点)、自分としてよく書けていると感じている。

lightingup.hatenablog.com

 

またこちらも書評系だが、「幸福学」という新しいコンセプトについて、6冊の書籍をもとに分かりやすく解説できている、、と自分では信じている。
lightingup.hatenablog.com

 

また読み手に呼びかけるような書き方を試してみたり、

lightingup.hatenablog.com

 

自分の失敗談を交えながら書くなど、論理的に書くだけでなく、多少は面白さを出すということも挑戦はしている(が、まだまだだということも十分理解している)。

lightingup.hatenablog.com

 

以上から言えること

コンサルタントは常に「Why So?」と「So What?」を考えながら生きている。

「Why So?」は原因分析なのでイメージも沸くかと思うが、「So What?」とは何なのか。それは、いくつかの事実や事象、考えやまとめに対して、そこから何が言えるのか、それにはどういう意味があるのか、示唆はなんなのか、という思考方法である。
私も入社直後は口酸っぱく上位者に言われてきたし、今は後輩に高頻度で次のように言っている。「だから何なの?どういう意味があるの?」と。

 

さて今回の投稿についても最後に So What? を考えて締めとしたい。

 

今回インプットする力、思考する力、アウトプットする力の3つに観点で整理してみたが、面白いことに、それぞれあらかじめ予期したことではなかった
(もともとは、自分の考えを世の中に発信したいということと、それによって他に人に何かしらのプラスがあればいいなとの思いでブログを開始した)

 

そう考えた際に、「意図的戦略と創発的戦略」という言葉が思い出された。

この考えは、ミンツバーグの創発的戦略というものが有名なのだが、今回はそちらではなく「イノベーションのジレンマ」で有名なハーバード大学のクリステンセン教授の著書『イノベーションオブライフ』から引用して説明したい。

 

まず 「意図的戦略と創発的戦略」の説明から。

戦略の選択肢は、二つのまったく異なる源から生まれる。一つ目の源は予期された機会、つまり前もって予見し、意図的に追求することができる機会だ。このような予期された機会を中心とする計画を実行するとき、意図的戦略を推進しているという。選択肢の二つ目の源は予期されない機会で、一般には意図的な計画や戦略決定、推進するうちに生じる、さまざまな問題や機会の混じり合ったものをいう。

予期されない問題や機会は、平たく言えば、経営陣や従業員の注目、資金、熱意を得ようとして、意図的戦略と張り合う。企業はここで選択を迫られる。当初の計画に固執するか、それを修正するか、それとも新しく生じた選択肢の一つに完全に乗り換えるかだ。この選択は、はっきりとした意志決定の形をとることもある。だが一般に、修正された戦略は、企業が予期されない機会を追求し、予期されない問題を解決するうちに下す、日々のさまざまな決定が凝縮したものであることが多い。このようにして形成される戦略は、創発的戦略と呼ばれる。

かみ砕くと、意図的戦略とはもともと計画していた「こうしたい!」というもので、でも実際に試してみると予期せぬことも起きますので、それを踏まえて「こっちの方がいいよね!」と修正したものが創発的戦略と呼ばれるものである。

なお有名な例を挙げると、ホンダはかつてアメリカに大型バイクを売り込むに行ったのだがまったく売れていなかった(意図的戦略)。そんな中、サブ機として持ち込んでいたスーパーカブが「予想外」に人気を集めていること気づき、途中で方針を変えたというのが創発的戦略である。

意外や好評だったのが、大きな国で小さなバイクなど売れるわけがないと誰もが思っていた、ホンダ50の名称でラインアップに加えられていたスーパーカブであった。

ホンダの公式HPにもそのエピソードが紹介されていたので、良ければご覧あれ(上記はこちらのHPからの引用です。)。

www.honda.co.jp

 

さて、私が『イノベーションオブライフ』を推す理由は、名前の通り人生のイノベーション方法が書かれているからであって、ビジネスの教授らしく、経営・経済の理論を人生に応用して教え解いている。今回の創発的戦略に関しては以下の通りだ。

私たちは人生やキャリアで、意識していようがいまいが、つねに意図的戦略か、創発的に現れる予期されない選択肢のどちらかを選びながら、道を進んでいく。どちらの手法も、私たちの心をつかもうとして張り合い、実際の戦略になろうとして正当性を主張する。どちらかの手法がもう一方に比べて本質的に優れているとか、劣っているということはない。むしろ、どちらを選ぶべきかは、あなたが道程のどこにいるかによって決まるのだ。戦略がこの2つの異なる要素からできていること、そして状況によってどちらを選ぶべきかが決まることを、しっかり理解しよう。そうすれば、キャリアを歩むなかで、ひっきりなしに現れる選択肢の中から、よりよいものを選び出せるようになる。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

  • 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本
  • 購入: 9人 クリック: 51回
  • この商品を含むブログ (21件) を見る
 

 

ここまで見てきた通り、このブログは自分にとって思わぬ副産物をもたらしている。これをどう捉え、今後どのように活用・どのように取り組んでいくかを考えるのが「創発的戦略」というものだ

もちろん新しいほうに飛びつけばいいというわけではなく、本書にも書かれている通り、選択肢がどのように出来上がったのか理解した上で、その時々の状況に応じて意思決定すべきである。かつこれは二者択一ではなく、両方の選択肢を内包した手を選ぶこともできるし、もう少し続けて第三の選択肢を見つけ出すのもありだろう。

個人的には、もう少し書いてみたいネタのジャンルがある(計画的戦略)のだが、それが自身の学びや成長につながるということを意識しながら(創発的戦略)ブログを書き続けていこうと思う。

ではでは。

 

スマートロック Qrio Lock を購入した理由:人は何かの課題を解決するために購入の意思決定をする

最初にオチを言ってしまおう。

昨日 Amazon で購入したスマートロックの Qrio Lock が届き、さっそく使っている。玄関の鍵がオートロックになった!凄い!クール!

しかし私がスマートロックを購入した理由は少し変わっている。それは、夫婦円満のためだ。

 

 

スマートロックってご存知ですか?

さてみなさんそもそも「スマートロック」というものをご存知だろうか?

f:id:tokudamakoto:20190629085640p:plain

ガジェット好きの方はご存知かもしれないが、まだ一般的な言葉とはなっていないので、知らない方も多いだろう。

最近いろいろなものがどんどんスマートフォンに集約されているが、スマートロックはスマホを家の鍵にしてしまう、とてもクールなアイテムだ。専用の機器を玄関のサムターンに付けるだけで、なんとスマホを近づけるだけで(=家に帰ってくると自動的に)鍵が空き、扉が閉まると勝手に鍵も閉まる。そんな優れものだ。

 

ちなみに、私が購入した Qrio Lock の商品紹介動画はこちら。キラーメッセージは「鍵が自由になる生活」とのこと。


Qrio Lock(キュリオロック) | 最新スマートロック製品紹介動画

 

営業マンは顧客の課題解決を販売している

さて、私は今経営コンサルティングの仕事を行なっているが、コンサルティングファームで働き始める前は、ベンチャー企業で数年間法人営業を行っていた。
扱っていた主な商材は、自社で開発を行っていたクラウドのソフトウェアである。ユーザーインタフェースのように目に見えるものはあるが、実際のモノはない、所謂無形商材と言われるものを扱っていた。ちなみにコンサルティングサービスも目に見えない無形商材である。

これは一般論であるが、無形商材の方が有形商材よりも売るのが難しいと言われている。何故ならば、モノが目に見えないため、顧客が購入した後の利便性を事前にイメージしずらいからだ。法人だとなおさらで、モノがないため「効果」を説明しなければならない。

ちなみにだからこそコンサルタントは資料作りにこだわる。

lightingup.hatenablog.com

 

しかし有形だろうと無形だろうと、顧客の購買意思決定の本質は変わらない。 買うものがなんであれ、、、家だろうが車だろうが、日用品だろうが、または株や保険のような金融商品とか、または映画のような「娯楽」、マッサージのような「サービス」、英会話スクールのような「教育」、なんであれ共通する本質がある。それは、人は自分の抱える課題を解決するために何かを購入するということだ。

 

例えば月に1万円も支払ってスポーツジムに通うのは太り過ぎという課題を解決したいからであるし、もう一歩踏み込むと、痩せることで「彼女」を作るためかもしれない。そういう文脈で考えると、もしかしたら月々1万円ジムに支払うよりも、マッチングアプリの Omiai に課金して「いいね」を購入する方が投資対効果が良いかもしれない(「いいね」とは異性に好意を伝える時に使うもので「いいね」をたくさん持っていると、それだけ多くの女性にアプローチできる)。となると、とある顧客層にとっては、「スポーツジム」と「マッチングアプリ」という一見関係性のない2つが競合関係になるケースもあるのだ。

 

こういった考えは面白いですね。いわゆるマーケター思考というものだ。

ちなみにマーケティング界には、マーケティングを学んだことがある人であれば必ず知っている有名な話がある。

電動ドリルを買う人は、「電動ドリル」が欲しいのではなく、「穴を開けたい」から電動ドリルを買うのである

hajimeteno-marketing.com

この本質を理解できれば、エスキモーに氷を売ることだってできるし、100円のコーラを1000円で売ることだってできる。

エスキモーに氷を売る ポケット版

エスキモーに氷を売る ポケット版

 
100円のコーラを1000円で売る方法

100円のコーラを1000円で売る方法

 

だからこそ、できる営業マンはヒアリングやニーズ喚起に力を入れるのである。

lightingup.hatenablog.com

 

私がスマートロックを購入した理由

さて冒頭の話に戻ろう。私は夫婦円満のためにスマートロックを購入した。

正直意味不明だと思う。が、ちゃんと理由がある。

 

私はごくごく稀に、頻度としては1ヶ月に1回あるかないかなのだが、家に帰った時に鍵を閉め忘れることがある

それに妻が気づくと、めちゃくちゃ怒られる&妻が不機嫌になってしまうのだ。「不審者がきたらどうするの?」と。

正直、マンション自体にオートロックもあるので、家に不審者がやってくる確率は相当低いのに・・・。数式で表せば以下の通りである。

 

(不審者が住んでいるマンションにやってくる確率)×(気づかれずに住人の後ろに付いていくなどしてオートロックを突破する確率)×(自分たちの部屋のドアノブに手をかける確率)×(たまたま鍵を閉め忘れる確率)

 

一番最後の確率は、仮に閉め忘れが月に1回で、妻が気づくまでに平均2時間かかるとすると、確率は (2時間)/(30日*8時間)=0.83%。

これだけでかなり低い確率なのに、それにさらに別の数値が掛け合わされるので、ほぼゼロと言っても差し支えのない数字である。

デールカーネギー先生だって、「道は開ける」の中でこういっている。

「記録を調べてみよう」。そして、こう自問するのだ。「平均値の法則によると、不安の種になっていることがらが実際に起こる確率はどのくらいだろうか?」

心配事の9割は起きないのだし、空が落ちてくるかもなんて考えるのは「杞憂」なんだよ。

 

・・・・・と考えるのだが、まあこんなことを理路整然と語っても逆効果なのは誰でもわかること。なので怒られる度に私は謝り続けるのである。。。

道は開ける 新装版

道は開ける 新装版

 

 

と、ここまでお読みいただけたら、私が2万円もするスマートロックを購入した理由をお分かりいただけたのではないだろうか。

そう、別にクールな生活がしたかった訳ではない。表面的な理由は、鍵を閉め忘れてしまっても大丈夫なように家の鍵をオートロック化すること。抱えていた課題は、鍵の閉め忘れで妻の機嫌を損ねないようにすること。つまり夫婦円満のためなのである。

 

もし Qrio Lock の中の人や、その他のスマートロックメーカーの中の人がこの記事を見ていたとしたら、「夫婦円満のためにスマートロックを!」というキャッチコピーでマーケティング活動を行うえばさらなる販路拡大を見込めるのではないだろうか!!!・・・いや、ないか笑

 

ではでは。

 

 

p.s.

Qrio Lock 自体はとても便利なので興味のある方は購入検討をお勧めします!

 

こんなガジェットが届き、

f:id:tokudamakoto:20190629030051j:image

ドアノブのサイズに合ったパーツを選び、

f:id:tokudamakoto:20190629030120j:image

台座の高さ調整して、

f:id:tokudamakoto:20190629030146j:image

あとは扉にくっつけるだけ!接着は3Mの強力な両面テープを使う。

f:id:tokudamakoto:20190629030245j:image

上から見るとこんな感じ。人と同じ要領で鍵の開け閉めをするのがよく分かる。

f:id:tokudamakoto:20190629030302j:image

 

ご興味あれば、どうぞ。 

 

コンサルタントは常駐先で聞き耳を立てている

プロジェクトが始まると、コンサルタントは客先に常駐することが多い。

クライアント企業に社員登録してもらってPCやらアカウントやら入館用のカードも用意してもらい、クライアント企業の社員のように毎朝出社する。場合によってはクライアント企業の名刺まで用意してもらって、他社との会議にコンサルの身分隠して出席することもある。

 

さてこの常駐には多くのテーマやネタが潜んでいるが、今回はどこで仕事をするかという点に注目したい。

 

常駐の2つの形式

常駐場所には大きく分けて、2つのパターンがある。

まず1つはどこか会議室を長期間お借りし「プロジェクトルーム」てして占有させてもらうパターン
※会社によってはコンサルやベンダー用に複数社が同席して使う大きなプロジェクトルームをあらかじめ用意している場合もあり、その時は残念ながら占有はできない

もう1つはクライアントの執務スペースの一部をお借りするパターン。これは文字通りクライアントの担当者と机を並べることになる。経営企画とのプロジェクトであればオフィス内の経営企画のデスクの島の片隅か、空きが無ければ近くの席。経理とのプロジェクトであれば経理の、情報システム部とのプロジェクトであれば情報システム部の、という具合である。
最近フリーデスクの企業も増えてきたが、多くの場合は部署ごとにどのエリアを使うという傾向はあるので、担当者の近くの席を自由に使うことになる。

なお、これは丸の内とか新宿とかの本社ビルだけの話ではない。地方の工場や研究所に行くこともあるし、子会社やグループ会社に行くこともある。私も国内であれば、一番遠いのは沖縄の会社(大手製造業の子会社の子会社)まで行ったこともある。季節が冬だったのが悔やまれる。

 

自由度の高いプロジェクトルーム

大きく2パターンある常駐場所だが、コンサルタント目線では、プロジェクトルームの方がいろいろと楽である。身内しかいないから気兼ねなく自由に振る舞えるし、会議室を予約することなく議論できるし、業務時間中にブログを書いていてもバレにくいですし*1)。あと、クライアントの誰かがふらふらっとやってくることも執務スペースに比べれば少ないので、自分たちの作業に集中しやすいというメリットもある。

 

執務スペースの利点はリアルな社内の空気・生の情報を得られること 

一方で、執務スペースの場合。
まずプロジェクトルーム利用時の逆で、クライアントと机を並べるため緊張感が高くなったり、打ち合わせするのにも会議室を予約しなければならなかったり、作業中に担当者にどんどん声をかけられることもあるというデメリットがある。
なお私がコンサルを使う立場なら、気軽に話しかけられてかつ監視もできるので、近くの席に常駐してもらうと思う笑

しかし個人的には、執務スペースの常駐にはこのデメリットを大きく上回るメリットがあると考えている。

それは、社内の空気感・生の情報を得られるということだ。

 

空気感。これ、意外と大事。

コンサルタントとは仮説を立てて検証する、ということを繰り替えるのが基本的なスタイルであるのだが、現場の空気感はこの仮説立案や検証時に非常に役立つ。例えば、数字だけで見れば業績も好調で業務も効率よく行われていそうと思っていたが、いざ現場で一緒に仕事をしてみると、執務スペースがなぜか元気がないであったり、または事前に数値で見ていたよりも残業で残っている社員さんが多い、とか。そういう数値やデータとのギャップはやはり現場でなければ分からないし、その「違和感」が大事な気づきになったりする

 

また中にはもっと直接的な生の情報が飛び込んでくることがある。何かというと、現場での社員同士のやりとりや、噂話などだ。例えば「AさんがXXXの取り組みを快く思っていないらしいよ」という噂とか、「なんで私ががBさんの代わりにYYYしなきゃいけないのよ」「ZZZ部から作業依頼が来ているけどまじ意味わかんない」という愚痴とか。みなさんも自分が言ったり人のを聞いたり、心当たりはあるのではないだろうか。職場は噂話や愚痴の宝庫だ。特に残業している時間になるとなおさらだ。

そのように入手した情報は、さすがにそのまま使うわけにはいかないので、プロジェクトメンバーとの打ち合わせや討議の時にしれっと「ところで部長のAさんって今回の取り組みついてどうお考えかご存知ですか?前回の説明させてもらった際に、腑に落ちていない顔をしていた覚えがありまして・・・」などとしたり顔で質問し、裏を取りに行く。

因みにネガティブな話だけではなくポジティブな話ももちろん聞こえてくれば、取り組みをドライブさせるための「ユーザーボイス」であったり、「施策が浸透している」ということの言質として利用できないかと思いを巡らせたりもする。

こういう動きができるのは、執務スペースに常駐することの強みである。

 

みなさんの周りにも、コンサルタントが潜んでいるかも・・・

皆様におかれましては、本社に限らずどこにいたとしても身の回りに自社以外の人間が潜んでいる可能性があるということ、そして思っている以上に自分たちの会話や雑談は周囲に聞かれていることを注意されるとよろしいかもですね。

もちろん雑談や愚痴言ってガス抜きするのは大事ですが、内容にはくれぐれもお気をつけあれ。

 

ではでは。

*1:厳密にはコンサルタントは成果がすべてであり「業務時間」という概念は無いので、いつどこで何をするのも自由である

抽象的な方針は超具体的な話まで落とし込まない限り、現実は何も変わらない

先日、抽象的思考と具体的な思考を行き来することで、思考を深めていく方法を書いた。

lightingup.hatenablog.com

これは、自分の頭の中で思考を深める時だけでなく、人とディスカッションする時であっても有効だ。

経営コンサルタントという職業柄、クライアントと抽象的な議論を行うことが非常に多い。何かの方針だったり、あるべき姿だったり、テーマは様々である。

 

こと私に関しては、正直クライアントとの抽象的な議論を抽象的なまま進めるのは苦手である。中には抽象論でどんどん話を進め、かといってそれが妄想ではなく現実味というか、語っていることは抽象論だけれども強固な論理やFactに裏付けされ、結論や合意にまで至らるツワモノもいるのであるが、まだまだそこまでの実力を自分は付けられていないということだろう。

 

ただ嘆いていても仕方がないので、自分はクライアントとの抽象的な議論であっても、極力具体的な話に落とし込んで討議することを心掛けている。

 

抽象的なテーマは具体的な話に落とし込め!

今日も、ちょうどそのようなエピソードがあった。

新しい取り組みを開始したばかりのクライアントと、その進捗を追うための月次の会議をどう運営すべきかを討議していたのだが、どうもお客さんの考え方が抽象的というか曖昧で、「進捗をレビューしたい」「ナレッジを収集したい」「PDCAサイクルを回してPDCAサイクルを回していきたい」というふんわりとしたお話ばかり。まあなのでこちらに相談が来たわけですが。。。

実情もやはり結果通りと言うか、過去2回の会議では、深い議論はできずにただ進捗の報告会で終わってしまっていたらしい。

 

さてそこで何を話したかというと、抽象論にたいして「どういう会議であるべきか」という抽象論をぶつけても話は進まないので、こちらから会議で用いるテンプレート(と言ってもただの空箱だが)を持って行って、超具体的に「そこにどういう情報を書き込むべきか」というボールをぶつけ、話を進めていった

ちなみにその会社ではサービスラインに合わせて4つの部門がぶら下がっているのだが、件の会議体に臨む前の月次の部門別会議体でそのテンプレートのどこを埋めて、さらにその下のレイヤーの実務者が全員参加する週次の部門別定例会ではテンプレートのどこを埋めるのか、ということまで話し合い決めてしまった。

f:id:tokudamakoto:20190627192455j:image

そうすると、ここはこちらの仮説通りだったのだが、一番下のレイヤーの週次部門別例例会で進捗しか報告おらず、その上位の会議体も進捗報告のみになり深い議論ができていなかった、という課題の原因が浮き彫りになってきた。

 

ここで、さらにもう一押し

さてここで話を終えてしまったら、現実は変わらない。

ということで、実は「現場で進捗報告からナレッジを抽出することができていないのだろうな」、ということをあらかじめ見越していたので、事前に用意しておいたなぜなぜ分解用のフォーマットをクライアントにお見せし、その場でその会社用に文言修正など多少のアレンジを加え、週次定例会用のフォーマットを作成してしまった。

ja.wikipedia.org

 

正直、ここまで具体的なところまで話を落とし込んで考えないと、現実は何も変わらないし動かないと思う。

「じゃあ現場で成功体験や失敗体験からの学びをまとめてもらうようにしましょう」とか「現場には『なぜ』を繰り返して学びを見つけるように促しましょう」などの上っ面だけを話しても、実行まで落ち切らない。これは、ほぼ絶対そうだ。
(現場で勘のいいひとがいれば回るケースもあるが、それはかなり属人的なソリューションなので推奨できるものではない)

 

なぜ具体論を避けてしまうのか

さて、ここまでの話、頭では分かっていても行うのはなかなか難しいかもしれない。

何が難しいかというと、話をうまく導くとか、「テンプレートを用意する」というアイディアが思いつくかどうかとか、先まりしてなぜなぜ分析のテンプレートを用意するとか、そういうスキルやテクニカルな話ではないと私は考えている。そんなものは、どうにかなるし、正直なくても問題はない。他の人の知恵を借りればいいのだから。

 

大事なことは、そのような他人からでも借りられるものではなく、「言い切る勇気」だ。

 「~~的な」などと言葉を濁してはいけない。事実と論理という根拠を自信に変え、言い切る。これが大事ではないだろうか。
(自分で言うのもなんだが、「事実と理論という根拠を自信に変え、言い切る」というフレーズ気に入った笑。今度後輩の資料のレビュー時かどこかで使ってみよう・・・)

 

これは、これまでも何回か取り上げてきたのだが、頭の中の話である知識や見識ではなく、まさに現実を変えていくための、やり抜く胆力・胆識のための必須要素だと思う。

lightingup.hatenablog.com

 

言い切るということが苦手なかた、是非「勇気」をもって。

 

 

そして最後に、これまた「どうやって勇気を持てばいいの」と疑問が沸くわくはずなので、具体的なアドバイスを。

一義的にはロジックによる裏付けが自身を生むのだが、それ以上に「根拠のない自信」も必要だと思う。

 

そしてそれ以上大事なのは、「間違っても大丈夫」というマインドでしょうかね。

今回の例のテンプレート案にしたって、仮説に基づいて作成しているものだし、間違っていたらそれを修正すればいいだけの話。普通の職業の人であれば、自分の意思決定が人の生き死や会社の倒産に影響を与えるなんてことはないだろう。だから安心して、間違えればいいのだ。間違っていたり大きく外していたとしても、その「言い切る」という姿勢やその発言そのものが、その場を動かしていくのだから。

 

ではでは。

伝わる資料・スライド作成のためにコンサルタントが必ず行うこと

経緯コンサルタントの仕事とは、一義的にクライアントの経営上あるいは業務上の課題を解決することである。

しかし、課題解決というものは短期的には目に見えないものであることが多い(仮にシステム導入だとしても、システム導入=課題解決ではない)。そのため、コンサルタントの仕事ではほとんどの場合において報告書などの資料作りがセットとなっており、たいていの場合は資料こそが成果物となる。

また資料は最終報告書だけではなく、提案書に始まり、定期的に行われる定例会や、プロジェクト中の論点を議論するためのディスカッションペーパーだったり、クライアントが中で内覧や稟議を通すための資料だったり、場合によっては社内説明会用資料や、社内トレーニング用の研修資料まで作成したりもする。

そのため、真面目に働いているコンサルタントは資料作成がうまくなるものだ。


余談だが、結婚式ではオープニングムービーやプロフィールムービー/スライドショーをよく見ると思うが、私は自分の結婚式の時に
・オープニングムービー
・妻の自己紹介ムービー
・自分自身の自己紹介ムービー
・二人のなれそめムービー
・エンドロールムービー
・二次会のオープニングムービー
・二次会での妻へのサプライズムービー
といった具合に、普段仕事で鍛えたスキルを駆使して、ひたすらスライドショーを作りまくったことを覚えている。
(ちなみに、なかなか好評だった)

 

コンサルタントの資料作成ステップ

さて、みなさん資料を作成する時に普段どこから着手しているか、思い返して欲しい。

例えば、最初のスライドから作り始めるとか。思いついたスライドから作るとか。大事なスライドから作るとか。

いろいろあると思うが、コンサルタントは誰に聞いてもほぼ100%、全体のストーリーラインから作り始めると言うと思う。

 

はじめはパワーポイントは使わない。まずは紙とペンを手に持ち、あるいはホワイトボードの前に立ち、中身の入っていない空のスライドを作成しはじめる。ホワイトボードに四角の箱をいくつか書いて、それぞれで何を言いたいかだけのメモや、その中に本当に簡単なオブジェクト(丸とか矢印とか四角とか、その程度)の配置だけを行う(これを「空パック」や「空パッケージ」、「空パケ」などと呼ぶ)。中身を作り始める前に、論理関係・因果関係に留意しつつ、全体のストーリーを固めるのである。

全体のストーリーが出来上がったら1枚1枚のスライドに移るのだが、その段階でもまだ中身は作成しない。その前に、その1枚のスライドで何を言いたいのか(「キーメッセージ」や「キラーメッセージ」と呼ぶ)を考え作文をする。スライド内のチャートがあるから言いたいメッセージが決まるのではなく、伝えたいメッセージがあるからチャートの中身が決まるのである。

そう後ようやく中身、、、かと思いきや、今度は空パケに戻ってキーメッセージだけを順に読んで、その資料全体で伝えたい内容になっているかどうかを評価し、そこでOKが出てからはじめて中身の詳細を作り始めるのだ。

 

整理すると、次のステップになる。

  1. 紙やホワイトボードで全体のストーリーラインを作成する
  2. 1枚1枚のキーメッセージを考える
  3. キーメッセージを順に並べストーリーラインと整合しているか論理構成を評価・調整する
  4. パワーポイントの中身を作りはじめる

そうすることで、芯の通った、伝えたいことが論理的に伝わる資料となる。

多少、流儀や宗派、好みによってバラツキはあると思うが、どのコンサルタントもおおむねこの手順で資料を作成するはずである。

 

ストーリーラインよりも大事なこと

という形でストーリーラインと論理構成を大事にして「伝わる資料」を作成するのであるが、実は上記のステップ、ステップ1 の前に ステップ0 が存在する。

それは、資料の「目的とゴール」を設定することだ。

 

目的、つまりその打ち合わせは何のために行うのか、またはその資料はなんのために作成するのか

ゴール、つまりその打ち合わせが終わった後に参加者にどのような状態になっていたもらいたいのか、またはその資料を読み終わった後に読者にどうなっていて欲しいのか、どのようなアクションを取ってもらいたいのか

 

これが決まらなければ、ストーリーラインを組み立てること、資料を作成作成することなんてできない。

 

私も自分で作成する資料は、表紙の次のページはほぼ毎回必ず「目的とゴール」が書かれたスライドになっている。打ち合わせ時も、最初に参加者にその会議の目的、何を確認したいのか・討議したいのか・意思決定して欲しいのかを伝え、その結果会議が終わってからどうなっていて欲しいのかのゴールを伝えてから本題に入るようにしている。

そうすることで、余計な脱線を防ぐことができるし、「目的のない会議」に陥ることもなくなるのである。

 

なお結婚式の余談に戻ると、生い立ちムービーを作成する際も、使いたい音楽と使いたい写真数枚しか決まっていなかった妻に対し、「生い立ちムービーでゲストに何を伝えたいの?お義父さんお義母さんにどう感じて欲しいの?ムービーが終わった時にどういう印象を抱いてもらいたいの?」とヒアリングからはじめたものである。うざがられたことは、言うまでもない

 

ではでは。

 

 

※パワーポイントの操作をはじめてから効率的操作を実現するためのショートカット集はこちら

lightingup.hatenablog.com

 

経営コンサルタントのお仕事に興味持たれた方はこちらもぜひ

lightingup.hatenablog.com

lightingup.hatenablog.com

 

 

幸福学第二弾:動きに多様性のある組織の方が幸福度は高い

先日「幸福学」に関する投稿をしたが、その後ネットで興味深い記事を見つけたのでもう少し考察を進めてみようと思う。

 

※幸福学に関する投稿はこちら。幸せな従業員は創造性が3倍高く、生産性が30%高いと言われており、労働人口の減少やイノベーションの必要性が叫ばれている現在、注目を集め始めている考え方だ

lightingup.hatenablog.com

 

幸せな組織のために必要なこと、必要な人

紹介したい記事は、みなさんご存知星野リゾートの星野佳路氏と日立製作所の研究開発グループ技師長矢野和男氏の対談記事だ。

www.foresight.ext.hitachi.co.jp

 

星野リゾートはフラットな組織や、ホテル再建時に従業員全員とコンセプトを話合うなどで有名だが、星野佳路氏曰くそれらは経験則で培ってきた文化だそうだ。

対して日立の矢野氏は技術者らしく、科学的アプローチで「幸せ」の要素を探っている。そしてその熱意がすごい。まず独自に身体運動を計測する加速度センサを開発しそれを搭載したリストバンド型のウェアラブル端末を2006年開発(今から10年以上前にそれを作ったというのもすごい!)。そしてそれ以来、24時間365日、入浴中以外はずっと着け続けて自分自身の体の動きを測っているとのこと。技術者根性の塊のようなお方だ。

そうすると、活発に動いている時とそうでない時が如実に分かるようになったそうで、次はそれをいろいろな職場のいろいろな人に付けてもらいデータと集め、また同時に「ハピネスについて点数化して質問したアンケート」調査を行い、相関関係を調べたとのこと。 そしてその結果として、「幸せな人の多い組織」ほど、従業員のフィジカルな動きに多様性があることが分かったそうだ。どういうことかと言うと、ほとんどの社員が動かずにPCの前にかじりついている職場よりも、人の動きや出入りが活発な、シンプルに言うと元気な職場の方が、幸福度が高かったということだ。

 

ここで、矢野氏の言葉を引用する。

矢野
例えば、職場の一例としてコールセンターをモデルに説明します。「ハピネス」って言うと安楽っていうイメージを持たれることが多いんですが、実はハッピーな組織ほど生産性が高いということが見えてきたんです。コールセンターで働く方にも、日によって動きの多様性が高い日と低い日がありますが、高い日は受注率が34%も上がったんです

昨年(※インタビューは2016年)、プロ野球福岡ソフトバンクホークスが日本一になりましたよね。その時の工藤監督のインタビューで、「ベンチの雰囲気づくりがよかった」というコメントがありました。川島慶三選手や福田秀平選手といった控えの選手が、特にピンチの時に声を出してくれて、とてもいい雰囲気をつくってくれた、と。

一見、控えの選手をねぎらったように聞こえますけど、データサイエンスを研究している我々から見ると、おそらく科学的に立証できることだと思うんです。というのは、コールセンターの調査で、体の動きが活発な人が出勤する日ほど組織全体の受注率が高いという結果が出たんです。その人自身は、個人業績は必ずしもよくない。ところが、いいムードづくりをすることで他のスタッフの活性度を上げて、その人たちに高い個人業績を出させているんです。

ここで注目したいのは2点。まずは、「従業員が幸福であることが生産性の高さと関係する」ということを定量的に立証できたこと(厳密にはここでは幸福度と相関性の高い「動きの多様性」との因果関係ではあるが)。

そしてもう1つが、動きが活発な人が周囲の業績の業績に良い影響を与えるという事例である。いわゆるムードメーカーというものですが、あくまで一例ではあるが、それが科学的に立証されたということだ。因みに、その人自身の個人の数字は必ずしもよくないという点がさらに面白い笑

この2点目の話、直感的には十分理解できる。
多くのメンバーに好かれている存在ということが前提条件ではあるが、活発に動き回る人がいればそれだけで場が和むし、そういう人は元気のない人を見つけて相談に乗ってあげたり、また情報のハブになって例えば誰かの成功体験を他の人に教えてあげたり、人・組織のモチベーションアップに貢献しているのであろう。

 

人事制度や予算(お金の使い方)を変えなければ持続的な変革はできない

費用に興味深い話であったが、これをドライに眺めると何が起こるのか考えてみたい。

活発な人によって成果の高まった人たち。この人たちは良いことづくめだろう。成果があがれば個人の評価も高まるのであるから。

一方、組織活性化の媒体となっていた活発な人はどうかと言うと、その人自身はもしかしたら成績が悪いケースもあるのではないか。矢野氏の例でも、「その人自身は、個人業績は必ずしもよくない」と記載があった。その場合どうなるかというと、単純に成果だけで評価された場合、その人の評価は高くないだろうし、場合によっては配置転換や場合によっては解雇ということもありうるかもしれない。

何が言いたいかというと、成果を中心とした通常の評価制度では、この活発な人の価値を推し量るのには限界があるということだ

ではどうすべきか。例えば上長がそのような動きを定性的に評価してあげるであったり、360度評価という形で同僚からの評価を反映させる、などの方法が考えられる。

またちょっと安直感はあるのと、通常評価制度とは別軸での導入になるのだが、同僚からの感謝をお金に換えるピアボーナスという制度もある。

www.somu-lier.jp

 

 こういう元気な人、私は大好きであるし、自分自身もそういう周囲に元気を与えられる人間でありたいと思っている。
しかしながら、そういう行動はどうしてもその個人の人柄に依存する属人的なものであるし、そのような活動が適切に評価されるということもまだまだ少ないのではないだろうか。

これから、幸福度という言葉こそ使われないとしても、従業員満足度やエンゲージメントなど、従業員を向いた施策は増えていくと思う。もちろん働き方改革もそうだ。ただ耳に入る事例だけで恐縮だが、どうしても「早く帰りましょう」という号令だったり、強制的に18時に電気を消すや、一斉ノー残業デーを設けるなど、小手先だけの施策ばかりが目に付く。

本気で変えようと思えば、今回の例のように科学的に分析を行い変革の因子を特定した上で、継続的な変革を支援するために、お金の使い方であったり、評価制度そのものを変えなければ、大きなインパクトは生み出せないのだ。

 

このテーマはなかなかに面白いですね。折を見て考察は続けていこうかと思う。

ではでは。