点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

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とある外資系コンサルティングファームで働いているアラサーのつぶやきです

幸福学第二弾:動きに多様性のある組織の方が幸福度は高い

先日「幸福学」に関する投稿をしたが、その後ネットで興味深い記事を見つけたのでもう少し考察を進めてみようと思う。

 

※幸福学に関する投稿はこちら。幸せな従業員は創造性が3倍高く、生産性が30%高いと言われており、労働人口の減少やイノベーションの必要性が叫ばれている現在、注目を集め始めている考え方だ

lightingup.hatenablog.com

 

幸せな組織のために必要なこと、必要な人

紹介したい記事は、みなさんご存知星野リゾートの星野佳路氏と日立製作所の研究開発グループ技師長矢野和男氏の対談記事だ。

www.foresight.ext.hitachi.co.jp

 

星野リゾートはフラットな組織や、ホテル再建時に従業員全員とコンセプトを話合うなどで有名だが、星野佳路氏曰くそれらは経験則で培ってきた文化だそうだ。

対して日立の矢野氏は技術者らしく、科学的アプローチで「幸せ」の要素を探っている。そしてその熱意がすごい。まず独自に身体運動を計測する加速度センサを開発しそれを搭載したリストバンド型のウェアラブル端末を2006年開発(今から10年以上前にそれを作ったというのもすごい!)。そしてそれ以来、24時間365日、入浴中以外はずっと着け続けて自分自身の体の動きを測っているとのこと。技術者根性の塊のようなお方だ。

そうすると、活発に動いている時とそうでない時が如実に分かるようになったそうで、次はそれをいろいろな職場のいろいろな人に付けてもらいデータと集め、また同時に「ハピネスについて点数化して質問したアンケート」調査を行い、相関関係を調べたとのこと。 そしてその結果として、「幸せな人の多い組織」ほど、従業員のフィジカルな動きに多様性があることが分かったそうだ。どういうことかと言うと、ほとんどの社員が動かずにPCの前にかじりついている職場よりも、人の動きや出入りが活発な、シンプルに言うと元気な職場の方が、幸福度が高かったということだ。

 

ここで、矢野氏の言葉を引用する。

矢野
例えば、職場の一例としてコールセンターをモデルに説明します。「ハピネス」って言うと安楽っていうイメージを持たれることが多いんですが、実はハッピーな組織ほど生産性が高いということが見えてきたんです。コールセンターで働く方にも、日によって動きの多様性が高い日と低い日がありますが、高い日は受注率が34%も上がったんです

昨年(※インタビューは2016年)、プロ野球福岡ソフトバンクホークスが日本一になりましたよね。その時の工藤監督のインタビューで、「ベンチの雰囲気づくりがよかった」というコメントがありました。川島慶三選手や福田秀平選手といった控えの選手が、特にピンチの時に声を出してくれて、とてもいい雰囲気をつくってくれた、と。

一見、控えの選手をねぎらったように聞こえますけど、データサイエンスを研究している我々から見ると、おそらく科学的に立証できることだと思うんです。というのは、コールセンターの調査で、体の動きが活発な人が出勤する日ほど組織全体の受注率が高いという結果が出たんです。その人自身は、個人業績は必ずしもよくない。ところが、いいムードづくりをすることで他のスタッフの活性度を上げて、その人たちに高い個人業績を出させているんです。

ここで注目したいのは2点。まずは、「従業員が幸福であることが生産性の高さと関係する」ということを定量的に立証できたこと(厳密にはここでは幸福度と相関性の高い「動きの多様性」との因果関係ではあるが)。

そしてもう1つが、動きが活発な人が周囲の業績の業績に良い影響を与えるという事例である。いわゆるムードメーカーというものですが、あくまで一例ではあるが、それが科学的に立証されたということだ。因みに、その人自身の個人の数字は必ずしもよくないという点がさらに面白い笑

この2点目の話、直感的には十分理解できる。
多くのメンバーに好かれている存在ということが前提条件ではあるが、活発に動き回る人がいればそれだけで場が和むし、そういう人は元気のない人を見つけて相談に乗ってあげたり、また情報のハブになって例えば誰かの成功体験を他の人に教えてあげたり、人・組織のモチベーションアップに貢献しているのであろう。

 

人事制度や予算(お金の使い方)を変えなければ持続的な変革はできない

費用に興味深い話であったが、これをドライに眺めると何が起こるのか考えてみたい。

活発な人によって成果の高まった人たち。この人たちは良いことづくめだろう。成果があがれば個人の評価も高まるのであるから。

一方、組織活性化の媒体となっていた活発な人はどうかと言うと、その人自身はもしかしたら成績が悪いケースもあるのではないか。矢野氏の例でも、「その人自身は、個人業績は必ずしもよくない」と記載があった。その場合どうなるかというと、単純に成果だけで評価された場合、その人の評価は高くないだろうし、場合によっては配置転換や場合によっては解雇ということもありうるかもしれない。

何が言いたいかというと、成果を中心とした通常の評価制度では、この活発な人の価値を推し量るのには限界があるということだ

ではどうすべきか。例えば上長がそのような動きを定性的に評価してあげるであったり、360度評価という形で同僚からの評価を反映させる、などの方法が考えられる。

またちょっと安直感はあるのと、通常評価制度とは別軸での導入になるのだが、同僚からの感謝をお金に換えるピアボーナスという制度もある。

www.somu-lier.jp

 

 こういう元気な人、私は大好きであるし、自分自身もそういう周囲に元気を与えられる人間でありたいと思っている。
しかしながら、そういう行動はどうしてもその個人の人柄に依存する属人的なものであるし、そのような活動が適切に評価されるということもまだまだ少ないのではないだろうか。

これから、幸福度という言葉こそ使われないとしても、従業員満足度やエンゲージメントなど、従業員を向いた施策は増えていくと思う。もちろん働き方改革もそうだ。ただ耳に入る事例だけで恐縮だが、どうしても「早く帰りましょう」という号令だったり、強制的に18時に電気を消すや、一斉ノー残業デーを設けるなど、小手先だけの施策ばかりが目に付く。

本気で変えようと思えば、今回の例のように科学的に分析を行い変革の因子を特定した上で、継続的な変革を支援するために、お金の使い方であったり、評価制度そのものを変えなければ、大きなインパクトは生み出せないのだ。

 

このテーマはなかなかに面白いですね。折を見て考察は続けていこうかと思う。

ではでは。