点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

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とある外資系コンサルティングファームで働いているアラサーのつぶやきです

「顧客視点で語っている」と相手に思わせる小手先のテクニック(でも意外と本質論かも)

「顧客視点に立て」「クライアントの立場で考えろ」

 

よく聞く言葉ですね。営業やマーケターであれば提案時に口酸っぱく言われるでしょうし、コンサルタントもクライアントに納得して動いてもらわなければ現実は何も変わらないので、こちらからの視点だけでなくクライアント視点で考えることはとても大事なことだ。
しかし、せっかくクライアント視点で考えてても、説明(資料やプレゼンテーション・コミュニケーション)で伝わなければ意味がない。そこで、小手先かもしれないが「クライアント視点で語っている」と相手に「思わせる」テクニックを紹介したい。 

なお本質的には、あまりにも酷いプレゼンテーションでもないかぎり、相手企業のことを考えて考え抜いて書いた紙や紡ぎだした言葉は相手に響くはずなので、こういったテクニックに頼る必要はないと考える。ただ一方で、あえてハードモードを選ぶ必然性はないし、より容易に伝わるであればそれに越したことはないので、クライアント視点で考える能力に長けている方にも、ぜひともお目汚しいただきたい。

 

クライアントの言葉を借りる

「クライアントの言葉を借りる」ことがポイントになる。私もコンサルティングのお師匠さんにから、「自分の言葉ではなく、クライアントの言葉で語れ」とよく指導されたものだ。

さて、クライアントの言葉を借りる方法としては、具体的には次の3種類の「言葉」を借りると効果的だと私は考えている。 

  • クライアント企業の言葉を借りる
  • クライアント社員の言葉を借りる
  • クライアント製品の言葉を借りる

 

クライアント企業の言葉を借りる

クライアントのHPやIR情報をよく読めば、繰り返し登場する言葉を見つけられるはずだ。例えば、「オペレーショナルエクセレンス」や「進化」「次世代」「オープンイノベーション」のような抽象度の高い言葉から、「3年で3割削減」「業界首位奪還」など分かりやすい目標など、内容は様々である。
そのような言葉は社内でも繰り返し使われているため、そのワードを資料なり、自分の話す言葉に盛り込むと、クライアントのことを「考えている」と思ってもらえる可能性が高くなる。その際、100% 正しくトレースすることをおすすめする。つまり、「イノベーティブ」という言葉が多く登場するのであればその通りの言葉を使い、自分勝手に「イノベーション」とか「革新的」などと言い換えないことが肝要である。

 

クライアント社員の言葉を借りる

別名、虎の威を借る狐。
社員さんがよく話す言葉を借りて使うと、社内ことを「分かっている」と思ってもらえる可能性が高くなる。その際、偉い人の言葉を利用できるとよりインパクトは大きくなる。そして、引用元を合わせて話すとさらに効果が高まる。例えば「常務の佐藤さんがよく『XXX』と仰られていますが、今回みなさんと一緒に取り組んでいるこのプロジェクトの目的もその考えと合致しており・・・」といった具合である。

なおちょっとした Tips になるが、上記の例の「みなさんと一緒に」という言葉選びもまた、相対するのではなく同じ方向を向いているという一体感を出すための小手先テクニック。
(上記の例に関してさらに言うと、本当は目的と役員の考えが完全に一致していない場合でも、このように話すとオーディエンスに「そうか合致しているのか」と思ってもらえる、、、可能性が高まる。これは完全にその場しのぎのテクニックだが・・・)

 

クライアント製品の言葉を借りる

B2B, B2C 問わず、製品には何かしらのキャッチコピーがついていることが多い。製品に関するキーワードは部署・役職問わず浸透していることが多いので、製品の言葉を借りると会社・製品に「興味を持ってくれているな」と思ってもらえる可能性が高くなる。サッポロビールの採用面接で、面接中に黙りこくって最後に「男は黙ってサッポロビール」と一言喋り内定をもらったという都市伝説の通りである。

行動を改めると、考え方も変わってくる

以上、小手先テクニックと蔑みながらまとめてみたが、馬鹿にできない面もある
嘘でもいい、その場しのぎでも構わないので、クライアントの言葉を借りて資料作成や説明を重ねると、クライアント視点が徐々に身についてくるのではないかと考える。

なぜなら、まずクライアントの言葉を借りるにはそもそもクライアントを知らなければならない。クライアントを知らなければそもそも借りる言葉が思いつかないからだ。
次に、クライアントの言葉を借りると、高確率で顧客の反応からより具体的なフィードバック(時には反論かもしれない)がもらえると思う。そうすると深いディスカッションに繋がり初期案がブラッシュアップできるとともに、その過程でクライアント視点の考え方を育むことができる。
最後に、資料やトーク内容にクライアントの言葉を盛り込むことをし続けると、その行動が習慣化し、クライアント用のアウトプット作成時だけでなく、「考える」段階からクライアントの言葉を意識できるようになると思う。

 

これは、まさにクライアント視点で物事を考えている、と言えるのではないだろうか?

 

「顧客視点に立て」「クライアントの立場で考えろ」という命題は非常に抽象度が高くそれだけでは具体的な施策に落ちないが、上記テクニックのように、具体的なアクションの積み上げによって考え方を変えていくということは、効果的なアプローチだと思う。

少し視点を変えてKPIマネジメントの文脈で言えば、「顧客視点に立つ」など結果的に得られる『結果指標(または遅行指標)』であるのに対し、「資料にクライアントの言葉をX個盛り込む」などは測定可能・自分自身でコントロール可能な『先行指標』だと言える。

小手先テクニックとして書き始めたが、意外と本質的な、クライアント視点に立つための効果的なアプローチかもしれないなとも思えてきた。

 

ではでは。