点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

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とある外資系コンサルティングファームで働いているアラサーのつぶやきです

営業の必須スキルである質問力は、全てのビジネスマンが習得すべきスキルだと思う:SPIN話法とFAB分析

今回も営業スキルの話、特にヒアリングスキル/質問力の話を通じ、日常のビジネスシーンで周囲を巻き込んで何かを行なっていく際に活用できる、とてもパワフルなツールを紹介しようと思います。

 

人はどういう時に行動するのか

人は自分自身で納得しなければ行動しないので、何かをして欲しい時にこちらから言うのは逆効果であり、相手に気づいてもらえるように促すことが大事だということを前回の投稿でまとめてみました。

lightingup.hatenablog.com

 

とはいえ、それってどうやるの? 

 概念的なことはわかった。ではどうやるの?

というのが恐らくみなさまの思いでしょう。ということで今回は、営業マンの質問スキルを紹介することで、人の行動を変えていく際の勘所と具体的な手法をご紹介しようと思います。

 

SPIN話法とFAB分析

そこまでメジャーな方法論でもないと思うので、恐らく初耳という方が多いのではないでしょうか?営業経験者でもご存知のない方もおられるのではないかと思います。

有名ではありませんが、これは非常にパワフルなツールです。

 

まずはどういったものなのか全体像を紹介します。 

SPIN話法:顧客にニーズを聞き出し提案に繋げる質問技法

  • 状況質問 Situation Questions
    相手の置かれた状況や背景を的確に把握するための質問(いわゆる普通の質問)
  • 問題質問 Problem Questions
    顧客が抱える問題を明らかにし、潜在ニーズを引き出すための質問
  • 示唆質問 Implication Questions
    顧客の抱える問題の影響の大きさ・深刻さを顧客自身に気づいてもらうための質問
  • 解決質問 Need-payoff Questions
    顧客に課題解決の重要性を認識させ、ニーズを顕在化させるための質問

FAB分析:提案内容を効果的に伝えるための分析手法

  • 特徴 Features
    商品の特性や性能、価格などの事実の情報
  • 利点 Advantages
    商品の良さや競合他社との優位性など、売手側の視点で見たメリット(定量化ができない)
  • 利益 Benefits
    商品を利用した結果、顧客が得る変化・利点・メリット(定量化ができる)

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それではまずSPIN話法を1つずつ説明していきます。 

状況質問 Situation Questions

相手の置かれた状況や背景を的確に把握するための質問です。話し手や、相手企業の状況(現在だけではなく、過去や未来まで)を知るために質問を行います。

この時に特に大事なことは、まず相手に対して興味関心を持つということ。そうすることで、表面的なことだけではなく、その裏に潜んでいる隠れた事実まで知りたいという想いが強くなり、結果その後の提案に繋がる価値のある情報を教えてもらえる可能性が高くなります。

 

問題質問 Problem Questions

状況質問の段階では、まだ顧客は購買意欲を見せません。まずは顧客の「潜在ニーズ」を引き出す必要があります。状況を踏まえて、どのような問題が生じているのか、または生じる可能性があるのかを聞き出します。

この際、顧客が回答しにくいオープンな質問(例:「何か困っていることはありますか?」)よりも、状況質問で得た情報を元に立てた仮説に基づくクローズドな質問(「~~で困っていませんか?」)が効果的です。

 

示唆質問 Implication Questions

この示唆質問というものが「SPIN話法」の肝になります。

普通の営業マンでしたら、顧客から「~~に困っている」と聞いたらすぐに自社サービスの紹介や提案をしてしまうでしょう。ですが、顧客は問題と感じていてもそれだけではなかなか行動には移りませんなぜなら、それが本当に困っている問題だと実感しているのであれば、すでに解決するための行動に移っているからです。

ですので、まず大事なことは、明らかになった問題に対して問題の重要度を示唆し、「それによってどれだけ弊害が生じているのか」を顧客自身に気付いてもらうことが重要になります。

 

単純な例だと、例えば顧客が『たまに(販売している商品の)納期が遅れてしまうことがある』という課題を持っている場合、すぐに『弊社のシステムでしたら納期を◯日間短縮でき~』とPRするのではなく、『では、その納期が遅れてしまうとどういう問題が発生しますか?』と質問をすると、その問題がどれだけ重要な問題なのかを顧客自身に考えてもらうことができます。

 

解決質問 Need-payoff Questions

問題の重要度は認識してもらえました。

それでも、まだ自社の商品PRや提案を行ってはいけません。

提案の前に、最後の段階である解決質問に移ります。これは、顧客に対してその問題の解決方法や、その重要性を訴えることによって、「顕在ニーズ」であることを顧客自身に気付いてもらうための質問です。このステップを踏まず、潜在ニーズの状態で一生懸命自社サービスの説明や提案を行っても、相手には響きません。

 

具体的には、顧客にとってのより明るい未来とはどのようなものなのかを、顧客と一緒になって考えましょう。先ほどの例ですと、顧客は納期遅れに困っていて、大きな問題が発生しています(例えばユーザーの離脱など)。
そこで課題が解決され納期が100%達成できるようになったらどうなるのかを考えてみましょう。例えば、顧客の離脱がなくなるのは当然ながら、残業や余分な業務もなくなるかもしれません。工場の回転率があがり生産量も増加するかもしれません。

このように、解決質問は楽しく明るい話題となります。お客様は積極的前向きな気分になります。この段階になれば、サービスの提案も十分に聞いていただけ、具体的に検討いただけるはずです。

  

続いてFAB分析です。

FAB分析

PRや提案の伝え方には、「特徴(Features)」と「利点(Advantages)」と「利益(Benefits)」の3種類があります。

特徴と利点と利益とのそれぞれの違いのイメージは湧きますでしょうか。簡単に説明すると、以下のような違いがあります。

  • 特徴:商品の特性や性能、価格などの事実の情報
  • 利点:商品の良さや競合他社との優位性など、売手側の視点で見たメリット(定量化ができない)
  • 利益:商品を利用した結果、顧客が得る変化・利点・メリット定量化ができる)

もう少し解説を続けます。「特徴」を説明すると、その商品/サービスが顧客のニーズを解決する場合には反応があります。しかし顧客には競合他社など他の手段との選択肢があるため、顧客は価格の比較をはじめてしまいます。

また、売手側の考えたメリットである「利点」は、あくまで一般的な解決方法です。そのため、顧客の個別具体的な事情や課題、問題の解決とは完全には一致しません。
その結果、顧客は「ちょっと違うな~」という心理状態なってしまい、説明した商品に対して反論が生まれてしまいます。そのため、購入してもらうためには、反論を封じ込める「説得」が必要になってしまいます(そしてそれは往々にして失敗します)。

 

これに対して「利益」は、顧客が認識した課題(SPIN話法によって顕在化したニーズ)に対する解決手段です

しかも、解決質問により顧客自らが「利益」を語っています。ですので、非常に大きな説得力があります

 

まとめると、「特徴」「利点」はカタログに書いてあるようなどの顧客にとっても同じ内容にすぎません。しかし「利益」は顧客の理解に基づいた、刺さるオリジナルな内容になります。

 

営業マンの活用方法

顧客は自ら必要性を感じた際に購入するものですので、できる営業マンは必死に自社の商品/サービスを売り込むのではなく、SPIN話法によりニーズを顕在化させ、特徴でもなく利点でもなく、顧客にとっての利益を語ることで、顧客の購買意欲を高めるのです。 

 

営業以外のビジネスマンにも是非知ってもらいたい!

 長々と書いてきましたが、上記スキルは決して営業マンだけのものではありません。社内外の課題を解決していく、そのために周囲を巻き込んで動かしていく、ということはいまや全てのビジネスマンに求められる役割だと思います。

その際、周囲の人たちの当事者意識を高めたり、自身の推す選択肢をより効果的に語るためにSPIN話法とFAB分析はとてもパワフルなツールとなると思います

 

もし効果がありそうだなと感じましたら、是非日常の仕事に活用してみてください。

 

 

ちなみに今回記載したSPIN話法をもっと詳しく知りたいと言う方は、下記書籍に詳細が書かれておりますので、興味があればチェックしてみてください。 

大型商談を成約に導く「SPIN」営業術

大型商談を成約に導く「SPIN」営業術

 

 

ではでは。