経営コンサルタントの仕事とは、コンサルティングとは何か
経営コンサルティングファームの仕事は究極的にBtoBですし、 性質上業務内容も基本的に公にならないため、何を行なっているのか見えにくいと思います。
転職希望者の方などは、イメージを掴むのだけでも一苦労かと思います。
今回は、そんな分かりにくいコンサルティング業界について、「コンサルティングとは何か」が分かりやすく書かれた元BCG日本代表、現ドリームインキュベータ代表の堀紘一氏書籍の書籍から、読み解いていこうと思います。
そもそもコンサルタントの役割は?
堀氏は書籍の序文でこのように書いています。
「何が問題か」を定義することがビジネスの世界では最も重要な問題である
似た内容は書籍の中で何度も登場します。
コンサルティングの仕事の本質とは、「何が問題かを突き止め、その答えを考える」ということ。つまり、「知っていることを教える」のではなく、「考える」ことこそがこの仕事の価値なのである
端的に言えば、二番煎じでよければ教えられるが、「一番」はクライアントとコンサルタントが一緒になってヒーヒー言って考えなければ生まれてこない
まさにこの通りでしょう。個人であれ企業であれ地域社会であれ、何かしら問題を抱えているかと思いますが、多くのケースは何が問題か分からないので対処できない、表面的な対応はできても根本解決ができない、というものではないでしょうか。
そして経営コンサルタントは、「経営」+「コンサルタント」であるわけですので、
企業の実態を徹底的に調査し、将来の変化を予測して、実行可能な戦略を立案するのがコンサルティングの役割
となるわけです。もっとも実際扱うテーマは多岐に渡り、戦略立案だけでなく業務改善でしたり組織設計でしたりシステム導入などもありますが、しかしベースにある考え方は共通です。
コンサルタントは「プロフェッショナル」である
一方で、「コンサルタント」という言葉がうさんくさいネガティヴに捕らえられてしまうケースも多々あるかと思います。その理由を本書では、
コンサルティングという仕事が誤解されている例は多いが、まず目につくのは、「コンサルティング」という言葉の氾濫だ。昨今では、銀行の相談窓口から生命保険の営業職まで、何かにつけて「コンサルティング」という言葉が使われている。(中略)コンサルティングという仕事が誕生した敬意を踏まえてまで考えると、世の中に氾濫する「コンサルティング」のほとんどは、本来の意味でのコンサルティングとはかけ離れていると言わざるを得ない
と表現しています。経営コンサルタントとはどういう仕事なのか。本書でも以下のようにプロフェッショナルであることを強調しています。
コンサルティングはプロフェッショナルの世界だ。コンサルタントとして大成したいのであれば、この「プロフェッショナル意識」は必須である
応募してくる学生のほとんどが、プロフェッショナルの厳しさを理解していない。知的でかっこよくて華やかでサラリーがいいと、コンサルタントがサラリーマンの延長にあると思っている人が多い。それは大きな間違いだ
堀氏が厳しく書くのも、「氾濫」と表現できてしまう通り、コンサルタントは名乗ったもの勝ちな側面があるからでしょう。
同じプロフェッショナル職である医師や弁護士、会計士とことなり経営コンサルタントは資格がありません。だからこそ、より自分に厳しくプロフェッショナル意識を保つことが求められる職業だと僕は理解しています。
「プロフェッショナルとはどういうことか」については、ぜひ下記投稿をご覧ください。
具体的にどういう仕事なの?
華やかな仕事、頭脳労働というイメージがあるかもしれませんが、実際はそれだけではありません。
クライアント企業の実態を把握するため、足を使って営業や生産の現場を見て回ることも多い。体力やフットワークの軽さがなければ務まらない。仕事自体もハードで、昼も夜も休日も休みなく働き続けることになる。また、クライアントの高い期待に応え続けていくには、精神的なタフさも求められる。
最近どこのファームも働き方改革を意識してきているようですが、それでもハードワーク、かつ泥臭い仕事であることは代わりはないですね。
どうしてそうなるかというと、決められた方程式を当てはめるのではなく、事実から最適解を考える答えのない仕事、どこまでも積み上げることができる仕事という側面が強いからです。
本書でも下記のように書いています。
哲学を語るな、事実を語れ。
情報を集め、因果関係が見えてきたら、あとはそれを戦略として組み上げていくことになる。そこで最も重要になるのが、「理論」と「事実」である。コンサルタントは、この事実を集めるための努力は惜しまない。
これと対照的なやり方として、「哲学」で相手を説得しようとする人がいる。「こうあるべきなのです」「こうでなくてはならないのです」といったセリフである。だが、これはコンサルタントが最も避けるべきやり方だ。
コンサルタント が拠り所とすべきは、あくまで事実だけだ。事実にもとづいて理論によって物事を設計するのがコンサルタントの本文だ。新鮮な事実を発掘して、それを理論に落としていくのが、コンサルタントに最も求められていることだ
正直、これは結構耳が痛いです。ともすれば「べき論」で話を持って行こうとしてしまうこともあるのですが、べき論だけでは差別化・競争優位性は生まれません。拠り所としての理論はあっても、事実からスタートし、クライアントと一緒に解くべき課題と、その課題の最適解を考えていくのがコンサルタントの仕事なのです。
なぜコンサルティングビジネスが成り立つのか
視点を変え、コンサルタントを雇うクライアント企業の立場から考えてみましょう。
クライアントから見ると、 コンサルタントは傭兵のようなものです。
そしてどうして傭兵を雇うのかと言うと、
そもそも経営戦略というものは、決して年がら年中立てるような代物ではない
会社というものが利益追求体であるという前提に経つと、経営戦略部隊を組織の中に常駐させることはあり得ない
コア業務に集中するために戦略立案業務をプロフェッショナルに外注してしまおう
そのほうが企業は人材を有効に活用できるし、そもそもプロに任せた方が、確実にいい戦略が立てられる
だからです。なおこれは戦略立案に限った話ではなく、業務改善や組織設計やM&Aや、最近流行りの最新テクノロジー活用やデジタルトランスフォーメーションも同様。正確性と時間を買う。これが企業がコンサルタントを活用する理由でしょう。
どうしてコンサルタントはクライアント企業に価値提供できるのか
本書に書かれている4つの理由を紹介します。
企業は往往にして、顧客を把握できていない
コンサルタントは買う側の視点を提供できる
ユーザーの「どういうものが買いたい」「どういうものは買いたくない」という本当の思いにはなかなか気づくことができないのだ。コンサルタントは、そこにユーザー側の視点を提供する
「過去の成功体験」が発展を阻害する
企業は往往にして「プロの常識」に縛られてしまっている特に変化が激しい状況において、常識はむしろマイナスに作用する。昨日の正解が今日の正解とは限らないのが現代という時代なのだ
「因果関係」を徹底的に追求できる
コンサルタントは物事を徹底して因果関係で捉える今ある結果をもたらした原因を、過去にステップバックして見つめなおせることが、コンサルタントがもたらす価値の1つだ
戦略立案には技術と経験が必要
戦略を設計するにも技術と経験が必要戦略コンサルティング・ファームは、そのための豊富な経験と人材を持つ、戦略立案のプロである
これらの理由により、クライアントに対してクライアントの負担を減らしつつ、より大きな付加価値を生み出すことこそ、コンサルティングファームの真髄なのです。
コンサルティングの醍醐味
本書では次の3つをコンサルタントの喜びとして記載しています
一つ目は、限られた時間の中で、クライアントに納得してもらえるような戦略の理論を構築できたときの達成感
二番目の喜びは、クライアントにコンサルティングの価値を認めてもらえたときに感じることができる
三つ目は、提案した戦略をクライアントが実行して、成果が数字として現れてきたときだ
これはいずれも同感でして、僕も経験ありますが、自身で考えたクライアント用のフレームワークが採用して活用された時や、プロジェクト終了後にクライアントからいただくお礼のメールにはとても充実感を覚えます。またプロジェクト終了後しばらくして「後日談」を記事やニュースで知った時はとても報われた気分になります。
どういう人がコンサルタントになれるのか
さて、ここまで真面目に読んでこられた方の中には、コンサルタント志望者もおられることでしょう。最後に、本書に書かれているコンサルタントに求められる資質を抜粋しようと思います。
どんなに優秀な人間でも、コンサルティングの世界に入っていきなり通用する人間はいない。
即戦力がいない以上、採用の決め手となるのは、その人の「のびしろ」ということになる。「これがあればかなりの確率でものになる」ろいうものが五つある。一つ目が時頭の良さ、二つ目が素直さ、三つ目に努力家かどうかということ、4つ目に打たれ強さ、五番目が運だ
よく「未経験でもコンサルタントになれるの?」という言葉を耳にしますが、答えはYesで、何故ならばはじめは誰もがコンサルタント未経験だからです。コンサルタント経験者なんてどこにもいないですからね笑
ベースとして最低限の時頭はいりますが、論理力はある程度は訓練で伸ばすことができます。
ただ必要な要素はそれでけでなく、素直さや努力家であるか、打たれ強さであるというヒューマンスキルも大きいという点も、大事なポイントです。
以上つらつらとまとめてみましたが、書籍に書いてあることの100分の1も伝えられていないと思いますので、本投稿で興味を持った方はぜひ書店等で手にとって眺めてみてください。
ではでは。