採用面接で面接官は何を見ているのか(3)過去・現在・未来の一貫性
夏休みが近づき、21年卒大学生/大学院生向けのサマーインターンのエントリーや選考も本格化してきたであろう。
私の所属するコンサルティングファームでは、コンサルタント・シニアコンサルタントが10〜15分程度の1次面接の面接官を担当し、私もこれまで何回か担当してきた。
その経験を踏まえ、面接官がどういう視点で面接を行なっているのかを取りまとめようと思う。
なお全3回構成のうち今回は最後の第三弾。
第一弾ではコミュニケーション力を「自分が言いたいことを話すのではなく、相手が聞きたいことを話すこと」と定義しまとめ、
第二弾では「結果ではなくどのように達成したかの再現性のあるプロセスを語る」という効果的な自己PR方法を解説した。
lightingup.hatenablog.com
今回は最終回として、説得力のある伝え方を考えてみる。
面接官は過去の行動から未来を推し量る
究極的に採用・不採用がどう決まるかというと、その候補者が入社後に活躍できるかどうかである。
(より厳密に言うと、生涯賃金2億円だとすると、従業員には給料と同程度の経費がかかると言われているので、費用4億円減価償却30年の投資に見合うリターンがあるかどうかを見ているのである)
新卒採用ならばポテンシャルだし、中途なら即戦力と求められるスキル/その後のスピード感は異なるが、活躍できそうな人がオファーを獲得するのは変わらない。
しかしながら将来を予想することは難しい。学歴や社歴だけでは判断できないし、履歴書・職務経歴書に書かれていることは誇張して書かれているであろうから、100%信じることはできない。
そのため、結果だけでなく過去の具体的な行動(プロセス)から、再現性の有無を評価するのである。
この点、詳細は前回の投稿をご参照あれ。
一貫性を持たせることで説得力が増す
この際、仮に再現性を担保した説明ができたとしても、その能力が会社の求めるものとズレていては意味がない。
過去の行動事実、現在の考え、将来像、この3つが矛盾なく繋がることではじめて説得力が生まれる。しかも、それができると論理的な人だと思ってもらえるというオマケ付きだ。
では、具体的に何と何を結びつければ良いのかを見ていこう。ポイントは、コンサルらしく3つだ。
- 具体的エピソード(過去)⇒ 興味関心(現在)⇒ 志望動機(未来)
- 具体的エピソード(過去)⇒ 強み/自己PR(現在)⇒ 志望動機(未来)
- 具体的エピソード(過去)⇒ 弱み+克服方法(現在)⇒ 志望動機(未来)
いずれも過去のエピソードと志望動機が繋がっているが、間に挟まれているものが異なる。
具体的エピソード(過去)⇒ 興味関心(現在)⇒ 志望動機(未来)
まずは現在の興味関心。
- 過去:過去に ◯◯ を経験し、
- 現在:それによって今は ◇◇ に興味があり実際 △△ を行なっている
- 未来:将来は御社で ☆☆ を行いたいと考え志望した
という論理構成だ。
この流れは当たり前のように思えるかもしれない。しかし、意外と今の行動まで語れる人はなかなかいない。例えばゼミの活動で環境問題に興味を持ったのだとしたら、環境問題解決に向けて今何をしているか、というエピソードだ。
これはほんの些細なことでも構わない。周りはそのような「現在」の補強を行わないので、小さな活動だとしても大きな説得材料になる。
また当然ながら未来の話とも繋がることが求められるが、その点は説明不要であろう。
具体的エピソード(過去)⇒ 強み/自己PR(現在)⇒ 志望動機(未来)
次に強みや自己PR 。上記と同様にまとめると、
- 過去:◯◯ の経験を通じ
- 現在:自分の強みは ◇◇ だと認識しており、
- 未来:☆☆ の面で御社でも活かせると考えている
という論理構成になる。
ここでの注意点は2つ。
まずは、自身の強みが会社の求めるものとマッチしていなければ意味がない。極端な話、100メートルを10秒で走れても、コンサルティングワークでは無用のスキルだ。ここまで露骨なケースはないが、汎用性の高い強みをアピールしてくる学生さんの多いこと多いこと。例えば「粘り強い」とか。粘り強いのは構わないのですが、それであれば、求める仕事においてその強みがどのように役立つのかをセットで回答して欲しい。この点は、相手が知りたいと思うことに答えよという最初の投稿を今一度見ていただきたい。
ちなみに今私が転職活動し自身のスキルをどう活かせるか質問されたら、まず応募しているポジションに求められるスキルを3つか4つに整理・定義し、それぞれのスキルを自分が有していることを具体的エピソード交え答えると思う。
そして2つ目の注意点は、特にソフトスキルをPRする場合、面接を通じてそれが本当かどうか評価されている点を意識してもらいたい。
同じ例だが「粘り強さ」を強みとした時、面接官の厳しい質問に食らいつくことができなければ、粘り強くないよね、と評価されてしまう。そう、現在の強みの一番の評価ポイントは面接なのだ。もちろん面接中で披露できない強みもあるだろうが、チャンスがあれば、ノンバーバルコミュニケーションも含めて、その強みを証明して欲しい。
具体的エピソード(過去)⇒ 弱み+克服方法(現在)⇒ 志望動機(未来)
最後は「弱み」だ。ここまでと同様に整理すると、弱みに関しては、
- 過去:◯◯ の経験を通じ
- 現在:自分の弱みは ◇◇ だと認識し、克服に向けて △△ を行なっている(あるいは △△ を心掛けている)
- 未来:御社で同様の場面に遭遇しても ☆☆ することで乗り切っていきたい
という論理構成だ。
面接官が弱みを聞くのは、弱みを単純に知りたい、ということではもちろんない。
「自己認識ができているか」「弱みを放置せずに克服に向けて何かチャレンジしているか」の2点を見ている。
(稀に「僕に弱みはありません」と話す学生さんがいるらしいが、そのような学生さんは基本的には自己認知が弱いと見なされ落とされるのでご注意あれ)
ここで特に大事なのは、今何かチャレンジをしているかどうかだ。弱み克服に向けて工夫をしているかどうかだ。
ほとんどの学生さんは弱みを考えてきているが、「克服に向けて今何をしていますか?」と質問すると、答えに窮してしまう学生さんも意外と多い。それだとただの失点だ。私はバカですと言っているに等しい。むしろ、その弱みに対処する姿勢とその会社が求める人物像を一致させて志望動機を補強するぐらいの気概が欲しいところである。
ここまでの総まとめ
では最後にここまでをまとめてみよう。私も面接官を担当するようになってから気づいた視点が多いのだが、以下の手順で組み立てると、面接官に響く受け答えができるようになると考える。
- 希望する業種業界、企業で求められる人物像や求められる能力を考える
- 面接官が、その人物像とマッチしているかどうかを確認するために、どのような質問をしてくるかを考える
- その質問に答える形で、再現性のある過去のエピソード・経験を考える
- 過去のエピソードと現在行っていることと志望動機を整合させ、一貫性を作り上げる
なお、1,2は第一弾、3は第二弾に詳細を記載している。
lightingup.hatenablog.comlightingup.hatenablog.com
なお一番のポイントは、2の自分の視点を「面接官がどのような質問をしてくるのか」の視点に転換できるかどうかだ。この問いを考えるというのは、やってみると意外と簡単にできると思うので、ぜひこれから面接を受ける方には事前準備の一環として取り入れてもらいたい。
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3回に分けて自身の面接官を経験したことによる考えをまとめてみましたが、何か不明点やもっと聞きたいことがあれば是非コメントください。このブログ自体でもいいですし、はてなブックマーク上でも構いません。
初回登校時には jtw さんから「相手が知りたいことを話せる人は稀有な存在」というコメントをいただき、
採用面接で面接官は何を見ているのか(1)コミュニケーション力とは? - 点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき
いやー、ビジネスの場においても相手が聞きたいことを話せる人ってのは稀有な存在。
2019/07/05 01:07
その指摘を踏まえた記事も書いたりなどしています。
みなさんどうぞお気軽に。
ではでは。