点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

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とある外資系コンサルティングファームで働いているアラサーのつぶやきです

採用面接で面接官は何を見ているのか(2)定量情報に興味はない。結果ではなくプロセスを語れ

夏休みが近づき、21年卒大学生/大学院生向けのサマーインターンのエントリーや選考も本格化してきたであろう。

私の所属するコンサルティングファームでは、コンサルタント・シニアコンサルタントが10〜15分程度の1次面接の面接官を担当し、私もこれまで何回か担当してきた。
その経験を踏まえ、面接官がどういう視点で面接を行なっているのかを取りまとめようと思う(全部で3回構成を考えており、今回は第二弾。第一弾ではコミュニケーション力を「自分が言いたいことを話すのではなく、相手が聞きたいことを話すこと」と定義してみた。興味のある方は下記ご参照ください)。

lightingup.hatenablog.com

なお、業種業界や求める人物像によって見られるポイントは異なると思うが、1次面接ではソフトスキルが見られるケースが多いと思うので、ベーシカルな要素として、きっと多くの方の参考になるのではないかと考える。

 

面接官は自己PRの定量情報に興味はない

近頃の学生さんはみんな学生団体や長期インターンやボランティアに熱心なのですかね?大抵その話を聞かされます。私の学生時代を振り返ると、サークル活動と女の子のお尻を追っかけることしかしていなかったのに・・・。まだ卒業してから10年も経っていないのですが、そんなにも変わるのか・・・。

と思いつつ、学生さんに自己ピーアールや頑張った話を質問すると、
「学生団体で幹事を勤め、イベントの集客を前年の2倍にしました」
「海外インターンに参加し10 社の新規顧客開拓を行いました」
「部活の新歓で毎年10人程度しか新入部員が入らないところ、30人の部員を集めました」
「アルバイトの居酒屋で自主的に改善活動を行い、前年比1.5倍の売り上げを達成しました」
などなど、多くの方が定量的に自身の実績をアピールしてくれます。恐らくリクナビマイナビなどの新卒向けキャリアカウンセラーや、大学のキャリア支援課の方々が「面接官に伝わりやすいように定量的に説明しましょうね」と学生さんに教えているのでしょう。実際、自己PRの書き方を検索して調べてみても、定量的に書くようにというアドバイスが多くヒットします。

 

これに対して、面接官経験が豊富ではない若輩者の考えではありますが、多くの面接官は定量情報自体にはまったく興味を持っていない、のではないかと私自身は思っています。

例えば応募先が広告代理店で、学生時代の活動で大学のフリーペーパーの広告を前年よりも倍多く集めたなどかなりマッチしていれば多少は興味持ってもらえるかもしれませんが、そんなケースは稀でしょう。さらに言えば、その数字が本当かどうか面接官は確認するすべはないですし、またその数字は恐らく1人ではなくチームで達成したものでしょうから、その数字だけで候補者を判断することなんで不可能です。

 

ということで、その後の具体的なエピソードを質問するための話のネタ程度にはなりますが、あくまでその程度です。

まずこの事実を理解していないと、学生さんと面接官の意識にギャップが生まれてしまうので、学生さんは自分の実績の数字を必要以上にドヤ顔で語るのは避ける方が無難かと思います。また逆に、数字を聞いた面接官の反応がイマイチだったからといって落胆する必要はありません。それが普通の反応で、良いリアクションをしてくれる面接官が優しい人なだけです。

 

結果よりも、それをどのように達成したのかのプロセスの方が大事

では何をアピールすべきかと言えば、結果のようないくらでも盛れるものではなく、個人の言葉でしか語ることができない目標達成に向けた努力したプロセスだ。

つまり、

  • そもそもどうして課題意識を持ったのか
  • どうしてその目標を設定したのか
  • 目標達成のためどのような創意工夫を行なったのか
  • 目標達成のためチームでどのように取り組んだのか
  • 困難に対してどのように取り組んだのか
  • その経験から何を学んだのか

などの具体的エピソードこそが語られるべきトピックスである。

こういったエピソードは一朝一夕では出来上がらないし、その人自身のこれまでの活動に深く根付いているはずである。だからこそ他の候補者との差別化要素にできるし、面接官も候補者がどういう人物なのか、そして仮に自分の会社に入社したら活躍できるポテンシャルを持っているかどうかを判断できるのか。

 

そう、見ていることは活躍できるポテンシャルを持っているかどうかだ。

くら寿司が即戦力として年収1,000万円で新卒を募集したりなどもしているが、こういうのは稀なケース。コンサルティングファームであったって、即戦力ではなくポテンシャルを見ているのだから。

toyokeizai.net

 

また、この「ポテンシャル」から考えても、定量的な成果が不要なことがご理解いただけるのではないかと思う。

成果なんて水物なので、たまたま数字が付いてきたからといって、それがそのまま入社後に使えるかどうかは別の話である。ラッキーパンチで大きな数字を叩き出した学生さんと、数字はなくとも自分の頭で考えて創意工夫を行なってチャレンジしていた学生さんのどちらが魅力的な、談じるまでもないだろう。

 

役割としてのリーダー経験とリーダーシップの発揮は別物

これをリーダーシップの文脈から考えてみよう。

就活の際に大量に発生する「サブリーダー」という言葉。正直半分以上は嘘ではないかと感じる。『面接ではリーダーシップ経験を聞かれるけど自分は特にリーダーをしてこなかった。サークルの代表だとHPチェックされると実名が出ていてバレるけど、サブリーダーならバレないだろう・・・』、そんなずる賢さが透けて見える。

 

ここでこれまた面接官は定量情報に興味がないのと同じようにばっさりと言い切るが、役割としてのリーダー自体に面接官は何も価値を感じない。なぜならリーダーや代表であること(結果)と、リーダーシップを取れるかどうか(プロセス)は別の話だからである。

逆に言えば、リーダーシップはリーダーの役割でなくとも発揮できる。学生団体ではヒラだったとしても、自分たちの活動の問題点を発見してそれを代表に提言し、他のメンバーと一緒に問題改善に取り組んだ経験があれば、それは立派なリーダーシップである。

 

マネージメント論の観点から

ここまでお読みいただければ、「学生団体で幹事を勤め、イベントの集客を前年の2倍にしました」という自己PRに全く意味がないことをご理解いただけたのではないか。それよりも、「部活では縁の下の力持ちと呼ばれ、目立たない存在ではありましたが後輩たち一人一人と話をすることをいつも心掛けており悩みや相談をいつも聞いていました。練習の厳しい部活でしたが、自分たちの後輩は途中で退部してしまう人は1人もいませんでした」と語る学生さんの方が魅力的に映ることにも同意いただけるのではないだろうか。

 

さて、ここまでの話をマネージメント論で語りまとめとにしようと思う。

意識して使い分けている人は実は多くない気がするのだが、管理指標には2種類ある。1つは「結果指標」または「遅行指標」と呼ばれる、文字通り後から結果となって測ることができる指標。もう1つが「先行指標」と呼ばれる、結果を得るために自分でコントロールすることができる指標である。

 

  • 先行指標:結果を得るために自分でコントロールすることができる指標
  • 結果指標(または遅行指標):後から結果となって測ることができる指標

 

営業で言えば、売り上げは完全に結果指標である。対して、例えばテレアポの架電数やアポイントメントの数、既存顧客へのフォローアップ数などは、自分自身でコントロールすることができる先行指標である。

強い組織は、結果指標だけでなく先行指標を管理している。一方売り上げの安定しない企業はひたすら結果指標だけをスローガンに掲げ、現場では気合いとガッツの属人的な活動を行なっている。前者の代表的な例は、超高利益率で有名なキーエンスである。 
(余談だが、前職での私のボスは元キーエンスの管理職経験者で、このプロセス思考をとことん叩き込まれたものだ)

 

参考

www.nikkei.com

誰でも売れる「プロセス思考」営業術

誰でも売れる「プロセス思考」営業術

 

 

面接官が見ていることも、候補者がどのような先行指標を掲げ、自分のコントロールできる範囲内でどのようなチャレンジをしてきたかなのである。

なぜならば、このプロセス思考が秀でている学生であれば、入社後に学生時代とは違うテーマであったとしても、同じようにそのプロセス思考を再現してくれる可能性が高いからである。

 

是非とも、これから面接を受ける方は、もちろん結果を定量的に語るのは良いことではあるがそれに止まらず、どのようなプロセスを経てその結果を得たのかを語れるようにして欲しい。

 

次回予告

ということで、 面接官を担当したことのあるもの目線で、面接時に注意すべきコミュニケーションについて論じてみた。

もう少しまとめたいテーマがあるので、続編も書いてみようと思う。

チラ見せすると、テーマは「相手に納得してもらえる話の組み立て方」。キーワードは、過去、現在、未来の一貫性。

 

ではでは。