点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

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とある外資系コンサルティングファームで働いているアラサーのつぶやきです

論語から読み解くリーダーシップに必要な要素:論語に学ぶその2

自身の学びの意味も合わせて、実践的な教えである論語をビジネスに活かす方法を取りまとめており、今回は第2弾としてリーダーシップのあり方を考えてみた。

なお前回の投稿はこちら。

lightingup.hatenablog.com

 

論語に「民は之を由らしむべし。之を知らしむべからず」という言葉がある。

 

子曰、民可使由之、不可使知之。

民は之を由らしむべし。之を知らしむべからず

 

民にすべてを教えることは難しく、信頼させるべきである、という意味だ。

 

少し補足すると、はじめの「べし」は命令、後半の「べからず」は不可能的推量と断定を一にした意味の助詞で禁止の助動詞ではないのだが、「知らしむべからず」を誤訳して「民に詳細を教えるべきではない」「教える必要はない」と理解している人もいるが、それは間違いである。

 

安岡正篤はこの言葉について次のように語っている。

民衆は利己的で目先のことしかわからないから、爲政者の遠大公正な政策の意味を理解させることは非常にむずかしい。時には不可能である。結局民衆の良心を信じ、「何だか能く分からんが、あの人の言うことや行いに間違いはなかろうから任せる」。信無くんば立たず、信頼させる以外に由らしむることは困難である。

 

さて、これは為政者向けの言葉なのだが、我々企業人にあてはめ解釈すると、次のようになると私は考える。

 

経営者は会社全体の利益、つまり「部分最適」ではなく「全体最適」を目標とするが、それは従業員視点で見ると、その人が所属する部署部門や個々人の活動・目標と相いれないこともある。そして、人は感情で動く要素も大きいため、そのギャップを理屈だけで説得することは当然ながら難しい。

だからこそ、経営者やリーダーは日頃から嘘偽りなく誠実に全力を尽くし、社員から信頼される存在になることが重要だ。「あの人が言うのであれば、付いていこう」と、従業員や部下から信頼されるリーダーになってはじめて、組織を適切にかじ取りできるのではないだろうか。

 

経営コンサルタントはまず理論で物事を考えるが、やはりそれだけでは足りないと感じる場面に多く遭遇する。

例えば、事業を成長率をシェアの4つに分けるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)手法で「負け犬に分類されたから、この事業から撤退する」となったとして、その事業を営んでいる従業員はすんなり納得するだろうか。

lightingup.hatenablog.com

もちろんコンサルタントも従業員に納得してもらえるような論理的かつ透明性の高い説明資料を作成したり、その後従業員に輝いてもらえる場所を設計したりする。だがそれでもすべてを伝えることは難しい。「之を知らしむべからず」である。

このような場面では、結局のところクライアント企業に鶴の一声で組織を動かせる人がいるかが、その話は進むかどうかを決めるケースが多い。「民は之を由らしむべし」である。

 

因みに、いろいろな企業に関われることで、そのようなリーダーシップが発揮される場面を複数見聞きし自身の糧にできるのがコンサルティングファームで働くことのメリットの1つであるが、反面、どこまでいっても第三者であるコンサルタントはそのようなリーダーシップを実践できる機会が少ないのがデメリットであるとも感じる今日このごろである。

 

ではでは。