点灯夫のように生きよう 〜 外資系コンサルタントの小さなつぶやき

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とある外資系コンサルティングファームで働いているアラサーのつぶやきです

病院入院時の差額ベッド代問題の闇は深そう:病院との効果的な交渉術と業界への問題提起

昨日病院に入院する際に発生する差額ベッド代に関する投稿を行いました。

lightingup.hatenablog.com

 

その後 Twitter で差額ベット代について調べてみると、「差額ベット代が高かった」「差額ベット代の件で病院と揉めた」「こんな高い差額ベット代支払えるわけがない」などのつぶやきが出るわ出るわ。あとは「治療を早く開始しないといけないので、同意せざるを得なかった」とか。一方で、「大部屋が満床だったから無料で個室に泊まれたー」というツイートも。

 

見えてきたこととしては、

  • 「満床が理由の場合は差額ベッド代を支払う必要はない」という事実は十分に周知されていない
  • 病院側の対応にも幅があり、大部屋が満床の場合は差額ベッド代なしで個室を案内してくれるケースもある
  • 一方で、同意書へのサインを拒否しても「同意がないと入院できない」というようなトーンでサインを強く求めるケースもある

という形で、まず差額ベッド代不要ということが十分に知れ渡っていないこともありますが、患者側に知識があるかどうかという問題だけでなく、病院側の姿勢にも問題があることが見えてきました

 

以上を、患者側の知識の有無と、柔軟に対応してくれる病院なのか、それとも必ず差額ベッド代を徴収しようとする病院なのかの2軸で整理してみました。

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Fact はなく恐縮ですが、Twitter で拾った声によると、右下の患者側は支払う必要がないことを知らず、病院に言われるがままに差額ベッド代を支払っているケースが大半のように感じられます。

そして右上の何も言わなくても差額ベッド代を免除されるケースはレアで、残りは左サイドの患者に知識があって、病院側がどのような対応をするかという枠に分類されるのでしょう。

左上と左下のどちらが多いのかは、そもそも差額ベッド代の支払いが不要だということを知っている人、つまりサンプル数が少ないのでなんとも言えません。しかし病院としは差額ベッド代は貴重な収入源であるでしょうから、すんなり差額ベッド代を不要にしてくれる病院は少ないのでは無いでしょうか。また病院側と揉めたく無いという入院患者の心理もあるでしょうから、病院側に強く言えないというケースも多いかと思います。

 

コンサルタント流交渉術

前回の投稿の最後に書きましたが、先日僕の妻が4日間入院しました。そして僕らの場合、マトリックスで言えば左下の「ハードな交渉が必要」なケースでして、まだ交渉は続いています笑

交渉の結果はまだわかりませんが、いろいろ頑張った甲斐もあり、個人的には満足のいく結果に落ち着きそうな感じがしております。

 

そこで、Twitter を見ていますと病院との交渉に苦労している人も多かったので、自分の今回の病院との交渉過程を踏まえて、ポイントをまとめてみます。
(ちなみにこの考え方は病院にだけ有効なわけではなく、一般的な交渉ごとに活用できるる内容だと思いますので、「コンサルタント流交渉術」と名付けてみました笑)

 

  • 現場の看護師ではなく医事課のスタッフと話をする
    まず抑えるべきポイントです。現場の看護師さん相手ですと、ハートの強い人でなければ、入院後の生活が心配になりことを荒立てるのも憚られてしまいますよね?
    ですので、看護師さんと交渉する必要はありません。むしろ入院会計は看護師さんの仕事上の役割ではありませんので、看護師さんと交渉をすること事態が間違っています。差額ベッド代の交渉は看護師さんとではなく、医事課の方と行いましょう。
    (なお入院手続きの流れで看護師さんに同意書サインを求められる場合もあるかと思いますが、その場合は丁寧に医事課の方と話をしたいという旨を伝えましょう)

  • 感情的にならずに、主観ではなく「事実」を伝える
    「高くて支払い得ません」「なんで支払わないといけないのですか?」などの主観の主張をしても効果はありません。また感情的に大声を出すのもマイナスにしかなりません。大事なことは、こちらは当然の権利を主張しているわけでので事実を事実として語ることです。その事実とは「厚生局から大部屋が満床であることを理由に差額ベッド代を請求してはいけないという通達が出ている」ということです。

  • 相手との共通認識を形成する
    これが大事なポイントです。「通達が出ているので支払いません」や「通達も出ているので支払いは不要なのではないですか?」とこちらの意思だけを伝える場合、相手に反論の余地が残ります
    その前に、相手と認識を合わせることです。つまり厚生局の通達について、相手にその通達を知っているかどうかを確認します。ここで相手が Yes と答えた後に、こちらからその通達を理由に支払いを行わない旨を伝えれば、相手はその依頼に対して No と答えることが非常に難しくなります

  • 上位者に代わってもらう
    病院側で差額ベッド代に関する対応手順を整備していない限り、会計担当者にいくら話をしても意思決定できないでしょう。その場合いくら会計担当者と話をしても時間の無駄です。担当者に丁寧にお願いし、意思決定できる上位者を連れてきてもらいましょう
    もしその場に上位者がいないようでしたら、同意書のサインはいったん保留とすれば大丈夫ですだと思います。なぜならば、医師法第19条第1項では、「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とありまして、同意書にサインをしないことによる入院拒否はできないはずだからです。

 

同じプロフェッショナル職視点で、医療現場はどうあるべきか

今回の件、調べれば調べるほど闇が深いなと思えてきます。。。

私は経営コンサルタントという仕事をしていますが、コンサルタントも医者も「プロフェッショナル職」という共通点があります。

 

みなさんプロフェッショナルという言葉の成り立ちをご存知でしょうか?

プロフェッショナルとは、宗教に入信する際の「宣誓する」という意味である “profess” という言葉からきていて、やがてそこから、厳かな公約や誓いを伴うような専門的職業人をプロフェッショナルと呼ぶようになったと言われているようです。

 

またアメリカではプロフェッショナル職とはなんぞやということが裁判で争われ、最終的に次のように定義されています。

ある学問的体系に裏付けされた高度な技能を、倫理観を持って、依頼人のために活用し、問題解決を図ることで報酬を得る人

そう、倫理観が必要なのです。

プロフェッショナルとクライアントでは圧倒的な情報の非対称性があります。そのためプロフェッショナルは悪いことをやろうと思えばいくらでもできる強い立場・・・。だからこそ、プロフェッショナル職はクライアントの不利益になることを行わないように、高い倫理観が求められます。

 

※プロフェッショナル職については以前投稿したことがありますので、よければこちらもご覧ください

lightingup.hatenablog.com

 

しかも医者に関していえば、「ヒポクラテスの誓い」という、紀元前から受け継がれている教えがあり、その中では次のように書かれています。

医神アポロンアスクレピオス、ヒギエイア、パナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。
この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わが財を分かって、その必要あるとき助ける。
その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。そして書きものや講義その他あらゆる方法で私の持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医の規則にもとずき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
・私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。
・頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
・純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。
・結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするものに委せる。
・いかなる患家を訪れるときもそれはただ病者を利益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。女と男、自由人と奴隷のちがいを考慮しない。
・医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を守る。
・この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。もしこの誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい

ja.wikipedia.org

 

このように、クライアントのこを第一に考え、高い倫理観を求められる医師の集団である病院が、患者の無知につけこむ差額ベッド代徴収という行為を行なっていることに、僕は費用に道義的な疑問を感じる次第です。

 

一方で、そうせざるを得ない病院の実情があることも分かります

とはいえ病院もビジネスです。収入がなければ何もできませんし、十分な収入があるからこそ、患者さんにとってプラスとなる取り組みや、例えば病棟の拡充や最新治療機器への設備投資、優秀な医師・看護師を集めるための魅力的な給料の支払いが可能になるということも理解しています。

そして調べたところ、病院の4割は赤字経営だとか・・・

jp.ub-speeda.com

president.jp

 

しかも意外なことに、赤字の割合は東京の方が高いそうです。

その理由としては、診療報酬は公的価格であるため全国一律で、東京だろうが地方だろうが、治療内容が同じであれば金額は同じということがあるようです。収入はお国に決められていて、人件費や土地代などは東京はとても高いわけですから、そりゃ経営は大変になりますよね。。

その中で、差額ベッド代は各病院が自由に決めることができます。そのため貴重な収入源になっているのでしょう。

 

こういった背景は理解できます。

それでもなお、患者の無知に漬け込むビジネスモデルは肯定できないですし、そのような策しかないのでしたら、統廃合ないし廃業されるべきではないでしょうか。

 

このように言うのは、専門外で恐縮ではありますが、数日妻の入院付き添いで病院を見ただけですが、まだまだコスト構造改善や、収入アップの打ち手がありそうだなと感じるからです。

コストダウンは看護師などの患者さんに直接的な影響のある領域は難しいかと思いますが、事務処理などのオペレーションはお世辞にもエクセレントとは言えなかったですので、まだまだ削減できる余地はあるでしょうか。

収入源にしても、特別室だって、プライバシー重視する人は多いでしょうから、中途半端な2人部屋4人部屋をすべて個室にした上で、一般人でも気軽に支払える価格に設定するとか。または僕のように働く人が患者の付き添いをしやすいように、病院の中に時間貸しワークスペースを用意するとか。リモートワークが進めば、高齢化社会と合わさりニーズはありそう。

深く考えていないジャストアイディアではありますが、アイディアだけならいくらでも出てきます。しかも僕のような外野の意見ではなく、現場の看護師さんからヒアリングすれば、もっと具体的かつ効果的な施策のタネもたくさん出てくるのではないでしょうか。

 

もちろん公的機関が故にできないこともたくさんあると思いますし、医療機関だからこそ守らなければならない点も多々あるのでしょうか、まっとうな経営を行う病院が1つでも2つでも増えてもたいたいものです。

 

ではでは。